中野区野方と「一五歳」

羽田圭介「野方」『ふれあいの窓』(東京都交通局)302、p.12、2020


羽田圭介の地名と作品』という連載の第2回。
村上春樹海辺のカフカ*1から。「『海辺のカフカ』の主人公である少年は、一五歳の誕生日がやってきたとき、野方の実家から家出し、夜行バスで四国の高松を目指す」。羽田少年は、


中学二年生の頃にマウンテンバイクを買い、埼玉県の実家からあちこちへ日帰りでツーリングするようになった。マウンテンバイクを買った理由も、中学一年生時の部活帰りに書店で読んだ、自転車キャンプツーリングの本の影響だ。だから当然、自転車キャンプツーリングはいつかやらなくてはならないことであり、なんとなく、中学生のうちに決行すべきだと思うようになった。
親に言えば反対されるのは、目に見えていた。だから『海辺のカフカ』と同じく旅の前に水面下で準備し、夏休み中だった八月のとある平日の朝、家族全員に黙って出発した。誕生日が一〇月なので、一五歳になる二ヶ月前、一四歳の時だ。埼玉の家を出て千葉県銚子市犬吠埼にて初めてのテント泊をし、二日目は茨城県霞ヶ浦そばの公園で寝て、三日目に自宅に帰り着いた。
平野勝之ドキュメンタリー映画監督失格』の話から、最後は「野方」に戻る。