堀江敏幸『戸惑う窓』

堀江敏幸『戸惑う窓』*1を昨日読了。


風の音に君を思うこと
対象のつかの間の、不安定な印象
光はノックせずに入ってくる
風になった本
窓と扉のあいだで
あの家の山の櫟林をミイ、キレイダナア――
エスカルゴの匂う部屋
青い闇のある風景
世界の生成に立ち会う窓
闇だけが広がっていた
あれの意味を知ってますか
その金色の衣のなかで
虚妄の窓の向こうへ
胸をかきむしるほど透明な窓
誰が箱男ではなかったのか
球状の窓
韻を踏んだ四行詩
世界の初期設定
輸入された鼠
語りの高い窓から
排水管と避難梯子の先にある空の下で
薬包紙の啓示
私は窓を愛しつづけた、窓に凭れて。
肩にとまった時間
そのうちに逢ふのです
一応は「窓」についての文集。或いは、「窓」を取っ掛かりにした詩、絵画、写真についての省察