承前*1
曰く、
糖尿病って遺伝するのか? もしそうだとすれば、道長の子孫の糖尿病罹患率は近現代(例えば近衛文麿*9)に至るまで、有意に高いということが言えるのだろうか。また、現在の天皇も母系を通じて「糖尿病因子」を受け継いでいる筈なのだ。
(前略)平安期、王朝貴族の代表例とも呼ぶべき藤原道長*2が糖尿病に苦しんでいたことは、最近はずいぶん知られている。道長と同時代に生きた藤原実資*3の日記によれば、道長は50歳を超えた頃からしきりに 喉の渇きを訴えて水をがぶがぶ飲み、時に疲れ切った様子を見せたという。これは糖尿病の典型的な症状で、当時の人々はそれを指して「飲水病」と呼んでいた。
当時の貴族社会では飲水病患者が非常に多く、この頃の酒が糖質の多い濁り酒だったことを原因とする説もある*4。ただ実は藤原道長に限れば、その病は生活習慣のせいばかりではない可能性もあるのだ。
道長の同母兄に道隆なる人物がいるが*5、彼はある時期から水を盛んに飲み始め、ついにはひどくやせ細って没している。更にその息子の伊周*6は、父亡き後、叔父・道長との権力等々に敗れて凋落した人物だが、彼は死のしばらく前から父と似た症状に苦しみ、37歳で没している。近い血縁者にこれほど糖尿病患者が集中している事実は、彼らの病気が遺伝性の糖尿病だった可能性を示している。
ちなみに道隆・道長には、道兼なる同母兄弟*7がいる。彼も糖尿病に苦しんでいたとすれば、兄弟が糖尿病因子を有していたとの説を補強できるのだが、長徳元(995)年に当時流行していた疫病*8で亡くなっている。
*1:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/02/19/134139
*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100107/1262876654
*3:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E5%AE%9F%E8%B3%87 See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/31/021621
*4:清酒が登場するのは江戸時代以降。江戸時代になると、「飲水病」(「糖尿病」)が減少するということはあるのか?
*5:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E9%81%93%E9%9A%86
*6:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E4%BC%8A%E5%91%A8
*7:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E9%81%93%E5%85%BC
*9:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070116/1168966875 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20080419/1208593120 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090905/1252115816 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20171129/1511915111 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180412/1523507352 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/08/14/004049