http://sicambre.at.webry.info/200804/article_17.html
読んでいて、現代における(明治以来の)姓と苗字の混同はもう止められないなと感じた。苗字はイエ制度と密接な関係を持つ。それに対して、姓はそれよりも古い氏族制度を体現しているといえるだろう。夫婦同姓か別姓かであるが、そこで言われる「姓」という言葉が姓と苗字の混同或いは姓の苗字への吸収を前提にしている。近衛文麿が藤原文麿であること、徳川家光が源家光であることの隠蔽。イエ制度を前提にする限り、嫁入りや婿入りは同族企業への入社に等しいので、夫婦同苗字は当然であるということになる。明治民法はこのイエ制度の原理を法的に確立したともいえる。しかしながら、イエ制度は現実的にも意識的にも崩壊しているといえるだろう。多くの人にとって、家族のイメージは結婚に始まり夫婦どちらかの死によって終了する〈近代家族〉により近くなっているといえるだろう*1。
イエ制度については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060914/1158256541、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060210/1139536917、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060503/1146669098、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061104/1162658727でも言及した。また、姓と苗字の違いについては、岡野友彦『源氏と日本国王』がわかりやすいと思う。
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古代の日本において、父系制が確立したことに中国大陸の影響が強く作用したことは論を俟たない。ところで、現代の中国における父系や母系を巡る言説は未だモルガンの『古代社会』やエンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』の影響が強い。これは(中国に限らず)マルクス主義が私たちの思考にもたらした傷のひとつなのだろうけど、それが儒家的な観念と癒着しているという側面もあるのではないか(勿論、このことは要検証である)。そこでは、母系制は容易に原始だとか後進性に結び付けられてしまうことになる。
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家族・私有財産・国家の起源―ルイス・H・モーガンの研究に関連して (岩波文庫 白 128-8)
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