「破格の人」

承前*1

鷲田清一*2梅原猛さんへ」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191226-00000011-sasahi-life


鷲田先生のこのテクストがウェブで読めるというのは凄く嬉しい。
曰く、


梅原猛先生。あなたはだれもが認めるように、「破格の人」でした。「破格」というのは、群を抜いている、誰も追いつけない、という意味です。一つの極限(extreme)と言ってもいいかもしれません。そういう極限が幾つか、岬の灯台のように遠くからはっきりと見える町は、どこか自由です。ああ、あそこまでやっていいんだ、人はあそこまでできるんだと、そこに集う人たちの可能性を拡げてくれるからです。
磯江景孜が絡むエピソードはこのテクストの山場なので、そっくりそのまま引用してしまおう。

「破格」といえば一つ、忘れられない思い出があります。先生は憶えておられないかもしれませんが、かつて京大の教養部におられた磯江景孜教授がまだ駆け出しの頃、重苦しい相談事があって、やむにやまれず、先輩である先生宅を訪れられたことがあります。その日のことを磯江さんは後輩の私にしみじみと語ってくださったのですが、それがなんともすさまじいものでした。

磯江さんが自分が抱え込んでいる不安についてぼそぼそ話しだすと、梅原先生は「そうか」と何度も頷き、親身になって助言もしてくださったそうです。ただ、その間も先生は大好きな大相撲のテレビ中継を見、さらになんと手もとの原稿に筆を走らせてもいたというのです。

 すさまじいです。ですが、この話を聞いたとき、すさまじさ以上に思うことがありました。そこには三人の梅原先生が同時にいるのです。大相撲中継に夢中になる先生と、原稿を執筆する先生と、人生相談にのる先生です。これは、「したいこと」と「しなければならないこと」と「してあげたいこと」のどれも疎かにしないという、先生の矜持を何よりよく物語るものではないかと、とっさに思ったのです。

また、「野良犬」の話;

先生が学長を務められた頃の京都市立芸術大学には、一匹の野良犬が住みついていて、その犬を学生たちは「たけし」と呼んでいました。彼らは、からかいながらもちゃんと学生食堂で食事を分け与えていました。囃し立てながらも大事にする。学生たちも梅原「たけし」その人に、しかと学んでいたのだと思います。

*1:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/01/16/001226

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060312/1142190612 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060313/1142223339 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070105/1167974950 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070420/1177093181 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071029/1193653921 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080831/1220155395 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090724/1248409057 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090816/1250358935 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091213/1260686440 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100213/1266069745 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100430/1272607469 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100921/1285038978 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101109/1289281535 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101112/1289497060 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101123/1290485341 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110215/1297786787 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110603/1307072747 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110616/1308197385 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110626/1309058098 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110627/1309194879 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110711/1310356905 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120508/1336445007 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120508/1336486987 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130630/1372528653 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130718/1374112169 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131218/1387381317 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140224/1393256418 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150417/1429297314 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150424/1429844873 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160104/1451930756 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160107/1452130435 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160722/1469159771 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170516/1494898759 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170802/1501694179 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170830/1504066381 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170929/1506651097 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20171020/1508471300 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20171202/1512180717 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180504/1525457042 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180926/1537924794 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20181026/1540572398