上から下から

「文春オンライン」編集部「「ベテルギウスには爆発してほしい」NHK子ども電話相談「天文担当先生」の宇宙愛がすごすぎる」http://bunshun.jp/articles/-/8809


「コスモプラネタリウム渋谷のチーフ解説員」の永田美絵さんへのインタヴュー。


―― 宇宙に関する仕事ができて「よかった」と感じることを教えてください。


永田 宇宙自体の魅力もさることながら、地球の素晴らしさを感じることができることでしょうか。こんなにたくさん星があるんですけれども、その中で生き物が住んでいる星って、本当に地球だけなんですよね。

―― 今では「火星移住」を実現しようとする人もいますが……。


永田 みなさん、簡単に「他の星に移住」などとおっしゃるんですけど、地球を守ったほうが全然たやすいんです。生き物が暮らす地球の環境って、46億年もかけてできているので。そう考えると、この地球を大切にしていこう、と伝えていかなければと思います。

 それに、私は勝手に「天文学は世界を救う」と思っていて。地球全体を俯瞰して見るような、大きい視点で物事を見ると、国だとか身分だとか、関係なくなるんじゃないかと思うんです。変な話、戦争とかも、「なんでこの地球の領土を奪い合ったりする必要があるの?」って思えるじゃないですか。

 悩みを抱えた10代の子が、私が働いているプラネタリウムに来て「広大な宇宙を見ていたら、なんて自分の悩みはちっぽけなんだって、気がラクになった」と言ってくれたこともあります。そういう気持ちになれるのが、宇宙の魅力だと思います。

上から目線は素晴らしい。また、下から目線もある;

―― 「NHK夏休み子ども科学電話相談」で先生が恒星のベテルギウスについて、「爆発しないかな〜」とおっしゃっていたことがSNSで話題になっていました。先生は、ベテルギウスに爆発してほしいんですか。


永田 してほしいです(笑)。もちろん、爆発して、地球が大変なことになっちゃうんだったらしてほしくないですよ。でも、ベテルギウスまではかなりの距離があって、爆発しても地球に何ら影響がないというのも分かっています。だったら、見たいじゃないですか。

―― 爆発すると、どうなっちゃうんですか?


永田 人類史上で超新星爆発はこれまで何回かあって、そのときの文献によれば、昼間でも見えるぐらい明るくなるんです。1カ月ぐらいは明るく輝いて、徐々に暗くなってくると。

 爆発したら、すっごいみんな空を見上げると思うんですよね。ついこの間、月食があったときに渋谷の街を歩いていたら、皆さん歩道橋とかの上からスマホで撮っていて。それを見た方も、やっぱり空を見上げて、雑踏の中で撮っていたりして。みんなが一緒になって、1つの宇宙を見ている、それって平和で素敵じゃないですか。

気になったのは、〈ズレ〉ということ。「超新星爆発」を見るという場合、それは遥か昔に起こってしまったことを、今まさに起こっていることとして見るということ。こちらの方も〈ズレ〉;

[宇宙が]本格的に好きになったのは、小学生のときに望遠鏡で月食を見たことがきっかけです。望遠鏡で月食を見ていると、だんだんと望遠鏡の視野から月が動いちゃうんですよね。要は、地球が回転をしているので、ある一点に望遠鏡を向けていると、ファインダーから月がズレていっちゃう。地球が回転しているというのは知識としては知ってはいたんですが、初めてそれを実感して「すごいぞ、これは」と。
天動説を信じている人がこの「ズレ」を見たら、天が回転していることを「実感」するのだろうか。