最後の「フルーツサンドイッチ」

瀧戸詠未「スイーツ狂・木嶋佳苗被告のグルメ日記、改めて見ると使える【死刑確定】」https://joshi-spa.jp/707621


木嶋佳苗被告*1が逮捕される以前に発信していたblog『かなえキッチン』について。


 都内のおいしいものを食べ尽くし、それだけではあきたりず全国から名品を取り寄せて着々と胃袋におさめていました。365日、おいしい何かを食べているといっても過言ではありません。

 彼女のチョイスする食べ物は基本的にはハズレがなく「間違いなくおいしいものを食べたい」とき、その食レポは巷に溢れるグルメ本よりも参考になるとすら思ってしまうのです(現在ブログは閉鎖、ネット上にキャッシュが残っている)。


「かなえキッチン」では、DEMELのザッハトルテ、松之助N.Y.のアップルパイや、ザ・リッツ・カールトンアフタヌーンティー、虎屋菓寮の赤飯などおいしいもの好きなら知っている王道グルメの食レポが2008年から毎日更新され続けていました。

 王道はもちろんですが365日おいしいものを食べているので「これおいしんだよね」と共感したり「食べてみたい!」と思うスイーツ情報がてんこもりです。


2009年1月の「かなえキッチン」には千疋屋総本店のパフェが異常なほど登場しています。ブログの日付とタイトルを並べてみました。


1月10日 クイーンストロベリーパフェ・千疋屋総本店
1月12日 千疋屋総本店フルーツパーラー再び
1月17日 京橋千疋屋・苺スープとフルーツサンド
1月19日 千疋屋総本店・ミックスサンドイッチ
1月19日 ☆クイーンストロベリーパフェ☆
1月21日 フルーツサンドイッチとフルーツティ
1月25日 京橋千疋屋ラ・フランスパフェ

性欲と食欲と殺意との関係については、既にどなたかが考察しているのだろう。東京のスイーツだと、やはり「千疋屋」が王道なのかと思ったりもしたのだが、今後木嶋佳苗という存在が映画とかドラマとして映像化された場合、スタッフは気が抜けないということになる。登場するスイーツの考証がいい加減だと途端に炎上することになる。
さて、木嶋佳苗は来るべきXデイに、この世の記念に「フルーツサンドイッチ」を食べるということはできないわけだ。日本の制度の下にいる限り。米国の刑務所で死刑囚はこの世の最後の食事として希望するものを食べさせてもらえるようだけど(Cf. 雑賀恵子『快楽の効用』*2。ところで、死刑囚の最後の食事ということで、トラウマ的に憶えている(と思い込んでいる)のがある。たしか小学3年生の頃だったので、1969年だと思うけれど、題名もストーリーも忘れてしまった時代劇に、具のない味噌汁が朝出されるとその日のうちに死刑が執行されるみたいなナレーションがあったのだった。本当にそんな制度があったのかどうかも勿論わからないし、この時代劇の話だって、私自身による記憶の捏造だという可能性は否定できない。しかし、かなり後までも、味噌汁を出されて、表面に具が見えないと、私は箸でかき混ぜて、豆腐でも馬鈴薯でもいいのだけれど、具がちゃんと入っていることを確認して、ほっと一安心するということを屡々行っていたのだった。
快楽の効用 嗜好品をめぐるあれこれ (ちくま新書)

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