「連続殺人」はレア

承前*1

匿名的な死体から名前のある遺体へ。
朝日新聞』の記事;


女性6人の有力な手がかり、位置情報など 座間9遺体
2017年11月4日17時51分


 神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、カード類や携帯電話の位置情報など、遺体の身元につながる女性計6人分の有力な手がかりが見つかった。警視庁は、6人の家族に鑑定のための資料提供を求めるなどして、被害者の特定を進める。遺体が切断され、身元確認が難しいなか、DNA型鑑定がカギを握る。

 捜査1課によると、死体遺棄容疑で逮捕された白石隆浩容疑者(27)の自宅アパートでは、クーラーボックスなど大型の収納箱七つから9人の頭部や約240本の骨が見つかった。司法解剖の結果、2人は死後1〜2週間、7人は死後1〜数カ月ほど経過していたとみられる。白石容疑者は9人について、主にツイッターで知り合い「本名は知らない」と述べている。

 事件は、東京都八王子市の女性(23)について、家族から行方不明の届け出を受け、捜査したことで発覚した。現場からこの女性を含む5人分のキャッシュカードや診察券が見つかり、座間市周辺で携帯電話の位置情報が途絶えた女性と合わせ、計6人分について身元の特定につながる有力な情報があるという。
(後略)
http://www.asahi.com/articles/ASKC255NRKC2UTIL02D.html


座間9遺体、警視庁が全員の身元情報把握 DNA鑑定も
2017年11月6日23時22分


 神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、警視庁が全員の身元特定につながる情報を得たことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁は6日、うち1人の身元について、東京都八王子市の田村愛子さん(23)と確認したと発表した。ほかの8人も家族からDNA型鑑定のための試料提供を受けるなどしており、身元は順次、判明する見通しだ。

 捜査関係者によると、新たに手がかりが得られたのは、埼玉県の女性(26)。ほかに、群馬、福島、埼玉各県の15〜17歳の女子高校生、埼玉県の女子大学生(19)、神奈川県の女性(25)、同県の男性(20)とその知人の同県の女性(21)の情報がある。

 田村さんはDNA型鑑定で身元が確認された。警視庁は、1人の遺体をクーラーボックスに隠したとして白石隆浩容疑者(27)を死体遺棄容疑で10月31日に逮捕しているが、この遺体が田村さんという。

 捜査関係者によると、白石容疑者は田村さんの殺害を認め「部屋に入れて少し話をしてから襲った」と話しているという。9人全員の殺害を認め、遺体は浴室で解体したと説明。殺害や解体の方法は事前にスマートフォンで調べたといい、のこぎりなども準備していたという。警視庁は今後、殺人容疑でも調べる。

 白石容疑者は、自殺願望をツイッターに投稿していた田村さんら被害者とやりとりし、自らも自殺願望者を装って自宅に招き入れていた。動機について「楽して生活したかった」と述べ、金銭目的だったと説明しているという。8月に最初に殺害したとする女性から50万円を入金させたとも話しているが、供述が二転三転しており、警視庁は慎重に裏付けを進めている。
http://www.asahi.com/articles/ASKC65J6YKC6UTIL03K.html

さて、


石戸諭*2「【座間9遺体事件】事件研究のプロが語る「特異なのは『数』だけではない」」https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/zama-kawai


河合幹雄*3へのインタヴュー。


河合さんは「いまの段階(11月1日時点)の報道をベースに考えてみます」と断ったうえで、まず人数に着目する。

《これまでの白石容疑者の供述として新聞各紙で報じられていることをもとに考えると、8月下旬からの2ヶ月で9人が殺害されていることになります。

8人〜10人の大量殺人事件というのは、日本の大量殺人の歴史の中にいくつかあります。

しかし、ほとんどは一家を全員殺害する、火を放つといった、一度に殺害してしまうケースなんです。

いわゆる連続殺人で9人というのは、日本の殺人のなかでは極めて珍しいパターンで、本当に白石容疑者が殺害していたとするなら、これは間違いなく特異だと言えます。

1971年に群馬県で起きた連続殺人事件(大久保清元死刑囚が逮捕される)が類似の事件だと言えるかもしれません。

日本の警察は歴史的に殺人事件の検挙率がとても高く、90%台半ば〜後半で推移しています。(※法務総合研究所研究部報告50も参照)

つまり、ひとたび殺人事件が発覚すればほぼ捕まるということです。

海外では、もっと多数の殺人を起こした例がいくつもありますが、それは検挙されないからであって、犯罪者の側の特性ではないです。

大量に連続殺人をする前に日本の警察は容疑者を逮捕して、止めていたとも言えます。》

要するに、日本警察の捜査能力は高いということ? 戦後日本の「連続殺人」ということだと、上で言及されている大久保清事件のほかには、どうしても『略称 連続射殺魔』=永山則夫*4の事件を思い出す。尤もこの事件を巡っては、少年法改正のための世論を盛り上げるためにわざと永山を泳がせていたという陰謀理論めいた言説はけっこう流通しているのでは? 勿論、その真相はわからないけれど。白石隆浩の事件だが、大久保清永山則夫よりも木嶋佳苗*5に近いと思うのだけれど、如何だろうか。
また、

《今回、私が着目している特異な点がもう一つあります。

2ヶ月で事件に巻き込まれ9人目で発覚するまでの間、事件発覚につながるような被害者周辺からの声が報じられていないということです。》

たしかにそれはそうだ。ただ、河合氏は(11月1日時点での情報を基に)「事件が発覚してからも、いまのところ被害者の身元につながりそうな情報がほぼ出ていない」と述べているが、上の記事にもあったように、現場からは「キャッシュカード」や「診察券」といった証拠品が発見されている。それで、この白石は、普通の犯罪者ならもっと丁寧にするだろう証拠隠滅がかなり杜撰なんじゃないかと思った。自宅に遺体を保存していたということもそうだけど。また、昨年目黒区で近所の老女を殺した池田徳信*6もそうなのだけど、よく自宅で人間の遺体を捌くことができたなと妙に感心してしまった。
さて、山本一太*7が何か言っているらしい;


ハフポスト日本版編集部「座間9遺体事件は「猟奇的なアニメに影響受けた感じ」 山本一太氏が推測⇒物議をかもす」http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/07/zama-ichita_a_23268916/


「最近はこうした猟奇的なストーリーのアニメ等々もあ」るって、具体的にどんなものなの? 誰か教えて! 現時点では、白石の動機についての「供述が二転三転しており」、「影響」を議論できる段階ではまだない。また、白石が「猟奇的なストーリーのアニメ」を視ていたという証拠もないわけだ。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171104/1509722687

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160122/1453481204 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160127/1453866712 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160325/1458875216 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160409/1460163099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160415/1460648516 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160526/1464228316 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160603/1464959516 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161105/1478309427 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161211/1481482837 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170103/1483467085 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170516/1494962934

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091028/1256753819 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101213/1292243637

*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070515/1179237549 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080616/1213547154 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131228/1388214636

*5:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120709/1341846186 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120711/1342020646 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130218/1361206348 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130220/1361380789 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130612/1371056922 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141208/1418006689 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170608/1496938754

*6:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160624/1466766644 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160625/1466815821 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160629/1467128011 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160705/1467645114 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160709/1468029857 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160712/1468286396

*7:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090922/1253616098 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110504/1304479854 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170303/1488508478