金井美恵子『目白雑録2』

目白雑録 2 (朝日文庫)

目白雑録 2 (朝日文庫)

数日前に金井美恵子先生の『目白雑録2』を読了。
取り敢えず目次を書き出してみる;


連載再開のお知らせ、その他
老猫病床記
貧乏ひまなし日記
「ラスト・エンペラー」と共に老いる
夏が来れば思い出す
灰かぶりキャベツ、その他
長月のアジサイ
グズグズ日記1
グズグズ日記2
正月日記
大久保の桃、その他1
大久保の桃、その他2
入れ替える、メンテナンスする
低所得層向けカップめん
電車内での化粧
スポーツ観戦日和
苔のむす豆
熱疲労日記
文芸時評風!
うつうつ日和1
うつうつ日和2
フット!
「母さんとやれよ!」
だって、……


あとがき、あるいは重箱のすみ
文庫版のためのあとがき
解説(田口賢司

ここに収められたのは2004年5月から2006年4月までの分。『目白雑録』*1と比べて直ぐに気づくのは、サッカーというネタが前面に迫り出していること、それから猫エイズを患った「トラー」の看病。勿論、前作と同様にこれが「金井美恵子先生の罵倒藝を愉しむ本」であることには変わりない。
目白雑録 (朝日文庫 か 30-2)

目白雑録 (朝日文庫 か 30-2)

この本の中の幾つかの面白いパッセージは後日抜書きする予定。ここでは2つメモするにとどめる。
先ず、「(前略)ソフトフォーカスのソフトポルノ風画面で秋吉久美子が老けたヤンキーのママというより、若い祖母然と、赤ン坊に安全このうえない離乳食のように、カップヌードルを食べさせるCMがあったことを思い出した」(「低所得層向けカップめん」、pp.144-145)。俺はこのCMを知らない。何時頃の?
1984年に横浜の山下公園で野宿中のホームレス*2が少年たちに襲撃され・殺されるという事件が起こったが、その頃、中上健次が金井姉妹に、「〈かあいそうなホームレスに暴力を行使するクズ中のクズの非人間、教育の荒廃のせいだ〉とメディアで扱われていた」「襲撃した少年たち」は「正しい」のだと「真剣な表情で言っていた」という(「「母さんとやれよ!」」、p.233)。

自分の言った正しいという意味の説明を、私にも姉にも断固拒む素振りの中上健次は、お前たちで考えてみろ、と言いたかったのだろう。少年たちが野宿者について言う「社会的なクズを排除するのが何が悪い」という発言が同時に自分たちの未来への不安と怒りそのものに向けられているのだという絶望的な構図は、いわば誰にもわかるはずなのだが、そうはっきりと発言する者はいないどころか、そうした少年たちに命の大切さを学ばせなければならない、という他人事の発言ばかりが目立っていた(今でもそうだ)のだから、中上は過激な断言的発言を今でもするかもしれない。(後略)(pp.233-234)

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100824/1282629673 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100831/1283285647
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283483751 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100913/1284405038

ところで、記し忘れていたが、2週間くらい前に岩尾龍太郎『江戸時代のロビンソン』を読了していた。

江戸時代のロビンソン―七つの漂流譚 (新潮文庫)

江戸時代のロビンソン―七つの漂流譚 (新潮文庫)

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081203/1228280406

*2:その頃はこういう呼称は殆どなかった。