死を想はず(猫の時間)

承前*1

メメント・モリの対極として。


猫は自分が病気でも、そこが人間と動物の違うところで、なにしろ永遠化された一瞬の連続を生きているから、自分の病状をあれこれ思い悩むことも、治療費のことも、自分が死んだら飼主の老姉妹の悲しみはいかばかりか、それを思うと心残りで、トラーは死んでも死にきれないよ、などとウツ的に考えないですむのが、なにしろ猫の美質で、こちらにしてみれば救いというところである。(金井美恵子「老猫病床記」『目白雑録2』、p.20)
目白雑録 2 (朝日文庫)

目白雑録 2 (朝日文庫)