ケルトのみにあらず

seiranzan*1「祭りに浮かれる阿保どもの一人になりたい」https://seiranzan.hatenablog.com/entry/2023/12/15/162644


ブリューゲルの絵から;


ブリューゲルが描く祭り、熱狂する人々、その中心にいるのはやはりバグパイプ奏者たちさ。いささか賤しい顔をしたバグパイプ吹き、彼らが人々に興奮をもたらし、歌わせ、踊らせるんだ。だが、一方で彼らは忌まわしく、不吉な一面も持っていたのだろう。同じくブリューゲルの「太った台所」という絵、台所の中ではこれでもかというほどのデブ共が楽しげに料理を貪り食い、一方入り口のところではお裾分けに与ろうとしている痩せたバグパイプ吹きが追い出されている。これなど暗にバグパイプ吹きの縁起の悪さを表しているのではないだろうか。そういえば宗教革命の指導者マルティン・ルター、反宗教革命派によって作られたフライヤーには彼がバグパイプを鼻から突きだす悪魔の手先として描かれている。

 人々を熱狂させるもの、それらは何らかのネガティブさと込みで捉えられていた。バグパイプは幾度となく演奏禁止という迫害を受けているし、やはり後世にバグパイプのように人々を熱狂させたヴァイオリンという楽器も賤しい存在として捉えられていた。今日最も人気があると言われているサキソフォーンという楽器も、1900年代の初頭に十年ほどバチカンから演奏する事を禁止されている。

バグパイプ*2というと、どうしてもスコットランドアイルランドといったケルト系の楽器だと思い込んでしまう。しかし、グレート・ハイランド・バグパイプ*3とかアイルランドのイリアン・パイプス*4の印象が強いからなのだろう。しかし、バグパイプという楽器はブリューゲルのベルギーを初めとして、汎ヨーロッパ的なものなのだった。バグパイプには吹奏するものと鞴式のものがあり、グレート・ハイランド・バグパイプは前者で、イリアン・パイプスは後者なのだが、バグパイプアコーディオンバンドネオンなどの鞴式の鍵盤楽器は系統的に関係があるんじゃないかということを思いついた。なお、ヴァイオリンが抑々不埒な楽器であったことは、ストラヴィンスキーの『兵士の物語』*5でも明らかなこと。因みに、ケイト・ブッシュには”Saxophone Song”*6、”Violin”*7という曲あり。

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ところで、博多どんたく*8でもバグパイプが使われているというのは知らなかった。