「生きるもの」としての

本村凌二*1「橋場弦『古代ギリシアの民主政』」『毎日新聞』2023年1月14日


曰く、


長い間、人類は少数の支配者と大多数の被支配者という形で政治を営んできただけだった。だが、紀元前六世紀末、「順ぐりに支配し、支配される」という政体が考えつかれた。哲学者アリストテレスは民主政をそのように表現したが、民主主義の中に生きている今日のわれわれにはそのような実感はない。というのも、近代「民主主義」は理念でしかないが、古代「民主政」はそこにある生活だったのだ。本書*2は、この「生きるもの」としての古代民主政の生態を政治家、知識人、庶民の心情にまで立ちいって生き生きと描き出してくれる。