「赤線」問題など

BLM運動高揚*1の背景を巡って。


吉富裕倫*2「そこが聞きたい 米黒人暴行死の背景」『毎日新聞』2020年7月7日


文化人類学者の竹沢泰子さんへのインタヴュー記事。


――差別が終わらない構造とは。
🔶34年の連邦住宅法に基づき、政府当局は、全米諸都市の居住区を4分類し、黒人居住区は赤色地区とし、ローンや保険を拒絶できるようにしました。後にレッドライニング*3と呼ばれるこの施策は60年代末に終わりましたが、差別の実態は残りました。今も黒人は白人に比べ持ち家保有率が低く、旧赤色地区は土地評価額が低いままです。投資が避けられたため、まともなスーパーマーケットも病院もない黒人居住区が少なくありません。このレッドライニングが、人種格差を再生産してきたさまざまな構造の一つだと考えています。健康的な食事や医療ケアへのアクセスが乏しく、持病に悩まされる黒人が多くて、新型コロナウィルスの感染率が白人の5倍近いことにも影響しています。黒人が白人居住区へ移ると、「地価が下がる」と白人は更に郊外に移転しました。また黒人らしい名前*4か白人らしい名前かで、就職活動で面接まで行く可能性が約5割違うという調査もあります。だから1対10という資産格差は解消されないのです。

――警察の取り締まりにも影響するのでしょうか。
🔶ニクソン政権(共和党)が「麻薬戦争」を開始したのですが、その後のレーガン政権(共和)やクリトン政権(民主)の時代に、薬物の徹底取り締まりにより大量収監政策を進めました。米自由人権協会によると、マリファナの使用率はほぼ同じなのに、黒人の方が白人の約4倍と高い比率で逮捕されています。民間刑務所の建設が進み、囚人たちの安価な労働力を利用したビジネスが盛んになりました。その結果、「黒人=犯罪者」という偏見がさらに強まりました。警察官は偏見の目で黒人らを頻繁に呼び止め、差別的な操作や棒鋼・殺人を繰り返してきました。また、一度有罪になると生涯、選挙権を剥奪する州も多かったので、多くの黒人の政治発言権も奪ってきたのです。

*1:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/06/10/131223 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/06/28/143403

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100107/1262834135 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100502/1272766742

*3:

住宅ローンの貸し付け安全性を示す地域の色分けで、緑、青、黄、赤のうち最も危険な赤色の線を引くこと。線引きは連邦住宅法に基づき全米239都市で行われ、「好ましくない人口集団」とされた黒人居住区は白人居住区と同程度の平均所得でも赤色に塗られ、大きな不利益を受けた。

*4:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110305/1299345568