女だった八幡

古事記神話入門 (文春文庫)

古事記神話入門 (文春文庫)

三浦佑之『古事記神話入門』*1から。
アマテラスとスサノヲの「宇気比」において、アマテラスがスサノヲの「十拳の剣」を噛み砕いて、噴き出したことによって生まれた3柱の女神はタキリビメイチキシマヒメタキツヒメ(p.41)*2。彼女らは「宗像三女神」と呼ばれる;


(前略)宗像大社(福岡県宗像市)に祀られています。この神社は三つの社からなり、古事記に語られているように、それぞれの社に一柱ずつ女神が祀られています。古事記によれば、九州本当にある辺津宮宗像市田島)にタキツヒメ多岐都比売命)、海岸から数キロ先に浮かぶ大島の中津宮にはイチキシマヒメ(市杵島比売命)、海岸から六〇キロほど離れた玄界灘に浮かぶ孤島・沖ノ島にある奥津宮(沖津宮)にはタキリビメ多紀理毘売命)が祀られていると伝えていますが、日本書紀宗像大社の伝えでは、辺津宮にはイチキシマヒメ(市杵島比売命)、中津宮にはタキツヒメ多岐都比売命)、沖津宮にはタコリヒメ(田心姫神)が祀られているとあり、祀られる場所が違っています。いずれにしても、この三女神はセットとして祀られ、海の民である宗像氏が尊崇する神でした。(p.53)

この宗像三女神は、宗像大社ばかりではなく、厳島神社広島県廿日市市宮島町)の祭神としても祀られています。(略)厳島神社は、もとは、瀬戸内海の航海を守護する神として祀られていたのです。そして、八幡宮総本宮として知られた宇佐神宮大分県宇佐市南宇佐)*3の祭神も、もとはこの三女神であったらしいということが、日本書紀に「三女神を以ちては葦原中国の宇佐島に降居さしめたまふ」(巻第一第六段一書第三)とあるところからわかります。(p.54)
アマテラスの性別にも曖昧性があるけれど*4、八幡にもそういう問題があったのね。八幡の場合は僧侶姿で表されることが多いけれど、八幡の男性化は神仏習合の下で仏道修行中の「八幡大菩薩」とされたことと関係があるのだろうか。
宗像三女神」と「出雲」についても書き写しておく。

(前略)古事記によれば、オホクニヌシは、奥津宮に祀られているタキリビメと結婚し、アヂシキタカヒコネとタカヒメのふたりを生んだと伝えられています(略)それは、海の民である宗像氏と出雲とが強く結ばれていたことを示しているわけで、日本海における海の道とそれにかかわる人びとの動きを考えるうえで、とても重要なヒントを与えてくれます。(ibid.)