奥平、長谷部、橋爪

塩倉裕天皇「脱出の権利」を改めて考える」『朝日新聞』2019年3月28日


奥平康弘*1『「萬世一系」の研究』*2は以下のように論じている;


万人に適用されるべき権利保障の体系が天皇にはまともに適用されていないと指摘。すべての人に保障されているはずの権利や自由が構造的に奪われている場合には、「窮極の『人権』」として、その制度の枠組みから逃れて普通の人間になる「脱出の自由」が保障されるべきだと説いた。
長谷部恭男氏*3の意見;

天皇の人権をどう考えるのか。長谷部さんは取材に対し今回こう語った。
「私は『人権』ではなく『基本権』という言葉を使いますが、すべての人々に平等に保障された権利としての基本権が天皇や皇族にあるのかと問われれば、私の答えは『ない』です」
「中世の身分制秩序を解体して作られた、すべての個人が平等に権利を享有する近代国家。日本国憲法も基本的にはそうした近代国家観を反映していますが、一部に身分制秩序の『飛び地』を残してもいます。それが天皇制です。飛び地に住む人には身分特有の特権と義務があるだけで、基本権はないと私は考えます。
橋爪大三郎*4議論;

本人の自由意思が認められない世襲制。職業選択も離婚も不自由。そんな不合理に皇族を縛り付ける国は、人権と民主主義の国ではない。橋爪さんはそう批判したうえで、本当に皇室を敬うのなら象徴天皇制に幕を引き、共和制に移行すべきだと論じてきた。
「尊皇共和制です」。橋爪さんは今回そう語った。
「皇室は戦前より特権が減り義務が重くなった。我慢と犠牲の人生だ。私は、皇室には国家機関であることをやめ、無形文化財として自由にお過ごしいただけばよいと思う。国民の拠出する寄付金で財団を設立すれば経済的基盤になる」
「象徴としては民間出身の大統領を置けばいい。政治に関与せず選挙でえらばれることもない大統領だ」
私も、法人の形態は何であれ、天皇制は民営化すればいいと思っている*5。問題のひとつは、政府からの皇室の財政的独立性を如何にして担保するのかということになるだろう。