「鳥肌」を巡って

https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/11/020539に対して、


id:nessko

引用された記事*1中で使われている「鳥肌」ですが、この記事では従来通りの嫌悪感や不快感でぞっとするという意味合いで使われていますが、最近はこの「鳥肌(が立つ)」を、感動した、すっごくよかった、というよい意味合いで使う人が増えていますね。ひと昔前なら、若い子にそういう使い方する子が目立つね、だったのですが、いまは中高年もポジティヴな意味合いで「鳥肌」を(とくに口語では)使う人が増え、もうめずらしくない。下品な俗語だった"やばい"も、いまはいい意味でもわるい意味でも使われていますし、英語にも似たような例はあるので、文句つけても意味ないのかもしれませんが、私はちょっとまだ「鳥肌」は気になるんです、自分ではawesomeみたいな意味合いでは使えない、使いたくない。

数年前に、

<三愛水着>15代目イメージガールは松元絵里花 Ray専属モデル
毎日キレイ 11月4日(水)12時27分配信


 水着ブランド「三愛水着」の15代目となる「2016年イメージガール」に、ファッション誌「Ray」(主婦の友社)の専属モデル・松元絵里花さん(19)が選ばれた。4日に東京都内で行われた発表会に、新作の紺の水着姿で登場した松元さんは、イメージガール就任について「本当にうれしくて鳥肌が立って涙が止まらなかった」と喜び、地元・福岡の方言を交えて「1年間、一生懸命頑張るけん、みんな応援してくれんといかんばい」とアピールした。


 松元さんは、1995年12月14日生まれ、福岡県出身。身長は168センチ、スリーサイズはバスト74センチ、ウエスト55センチ、ヒップ84センチ。同イメージガールは、02年の山本梓さんを初代に、木下優樹菜さんや菜々緒さんなど、多方面で活躍するタレント、モデル、女優を輩出している。今回から名称を、従来の「三愛水着イメージガール」から「三愛水着楽園イメージガール」に変更した。

 この日は、14代目の朝比奈彩さん、13代目の久松郁実さんら歴代のイメージガールも出席。所属事務所が一緒で同い年だという久松さんは、松元さんと抱き合い、「こういうおめでたい席でお祝いできたことがすごくうれしい」と一緒に涙を流す場面も。また、発表会後、先輩の木下さんが先日第2子を出産したことについて、コメントを求められると「うれしいです。まだ話したことはないので、今度お会いする機会があったら、イメージガールになったことを報告したいです」と話していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151104-00000001-maikirei-ent

という記事を読んで、「「鳥肌」というのは寒さとか恐怖によって起こるものだと思っていたのだが、最近の若い女性は〈うれしさ〉によって「鳥肌」が立つようになっているのだろうか」と驚いたということがあります*2。「鳥肌」というのはそもそも寒さのような刺戟から生体を防衛するための反応。〈うれしさ〉という刺戟から自己を防衛しなければいけないということになる*3。嘔吐も異物から生体を守るための反応ですけど、「うれしくて鳥肌が立って」というのは、吐き気がするほど美味しいと言っているようなものですよ。
勿論、快と不快は相互に反転可能なものだし、崇高(sublime)という感覚があるじゃないですか。例えば、高所から下界を見下ろしたときの、足が竦んで目も眩むという感覚も崇高の一種ですよね。花柳幻舟も魅せられた*4。それで、「気絶するほど悩ましい」(阿久悠*5というか、生死の境に赴くのかといえば、そうでもない。
「やばい」を巡っては、万能形容詞としての「やばい」が私たちの「言語使用能力」の毀損と感情の「粗雑」化を導くという清水真木氏の批判があります(『感情とは何か』、pp.11-13)*6