アンソロジストとしての

承前*1

四方田犬彦中条省平「忘れ去られたひとびとの声を拾い上げる」『ちくま』(筑摩書房)569、pp.50-55、2018


寺山修司の話から;


四方田 (前略)彼は無名な人間が書く詩が本当の詩なんだというロートレアモンの予言を実践したわけです。『高三コース』や『蛍雪時代』の詩の編者をずっとやっていて、そこで見つけた詩を『現代詩手帖』に載せたり、ついには『セブンティーン詩集』という十七歳による詩集を作ったり、女性の投稿者による『わたしの詩集』というアンソロジーを十何年か出している。四十七歳で亡くなるまで、映画を撮ったり演劇をやったり猛烈な忙しさのなかでそういうことをしていたのはすごいと思う。面白いのは、中国で私の本の翻訳を出してくれるというので北京に行ったら、そこの社長さんが最近出した売れている本というので『書を捨てよ、町に出よう』を挙げてきた。これを中国のひとは、いまの日本の作家のものと思って読んでいる。
中条 素晴らしい話ですね。
四方田 余談ですけど、僕は天井桟敷のオーディションに二回も落ちているんです。
中条 ええ! そうだったんですか。四方田さん、『ガロ』か『COM』にも投稿してましたよね(笑)。
四方田 『ガロ』で読者のお便りには二回載ったんだけどね。
中条 まさしく六八年の当事者だったわけですね。
四方田 それを言ったらあなただって中学生のときに『季刊フィルム』にゴダール論や松本俊夫論を載せていたんだからすごいですよ。(p.54)
私も昨年『書を捨てよ、町に出よう』の中訳本が出ているのを見て吃驚したことがある*2
書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)