PMS/PMDDなど

田中ひかる*1「生理を理由に、無実の女性が殺人犯に仕立て上げられ、死刑判決を受けた「甲山事件」」http://wezz-y.com/archives/50680


曰く、


月経(生理)のある女性の大多数が経験している月経前症候群PMS)。

 PMSには頭痛、腹痛、浮腫みといった身体的な症状のほかに、不安感、憂鬱などの精神的な症状も見られる。日本では精神症状の方が注目されがちで、「暴言を吐く」「暴力を振るう」「集中力を欠き仕事ができなくなる」といったことまでが、PMSの症状としてカウントされている。しかし、精神科のカテゴリーでは、日常生活にまで支障をきたすような症状はPMSではなく、月経前不快気分障害PMDD)という別の概念で捉えられるようになってきており、治療法も確立しつつある。

 いまだほとんどのメディアが、多くの女性に見られるPMSと、重篤な精神症状が現れるPMDDを混同して伝えているのだが、月経と精神不調を安易に結びつけることは、女性はもちろん社会に対しても不利益をもたらす。

後半では、「甲山事件」という冤罪事件*2が取り上げられている。無実の女性が殺人の嫌疑をかけられた主な根拠は、彼女が「たまたま事件の日に月経が始まった」ことだった。


田中ひかるPMS月経前症候群)と日本人の不幸な出会い」http://wezz-y.com/archives/50478


曰く、


日本では、明治時代に「血穢(出産や月経の穢れ)」に基づく慣習(物忌みや月経小屋など)が法令で廃止されると同時に、西洋医学に基づいた月経観が移入された。それは、“女性は月経があるがゆえに脆弱で不安定だ”という考え方で、女性の犯罪や自殺も月経時に多いとされていた。

こうした月経観は、大正時代なかばには、医療関係者のみならず、女子教育や犯罪論を介して、ある程度世間に認知されていた。

 例えば、著名な精神科の医師が上流階級の女性たちを前にした講演会で、「三越あるいは白木屋等において比較的教育ある婦人あるいは相当の位置を有する奥様または令嬢方が万引をすることがあるということを時々耳にいたすが、これは自殺者の場合と同様、月経時に内部的精神に多少影響をこうむり、少しの刺激にも感じやすき状態に置かれておるところに、外部的刺激すなわち美しき着物、装飾品、化粧品等を見て一層動かされ、この内外の原因によっておぞましき万引なる犯罪をあえてなすにいたるのだと思う。このほか、夫婦間の不和喧嘩、窃盗、殺人罪中詳細に調べたなら、おそらく月経と関係を有する場合が多いことと思う」と述べている。

 こうした専門家たちの見解をもとに、女性の犯罪や自殺は月経と関連づけられた。1919年に島村抱月の後を追った女優松井須磨子の自殺も、月経によるものと解釈されている。当然ながら、女性が犯罪を犯した場合は、司法精神鑑定で必ず「犯行時の月経状態」が聴取され、月経中であったと主張すれば、かなりの確率で罪が減免されていた。

 戦後になっても、女性の犯罪を月経で解釈しようとする傾向はなくならず、特に精神医学者の広瀬勝世は、「月経と犯罪の関連性」についての研究に力を注いだ。そして、その研究の過程で紹介したのがPMSだった。

「月経と犯罪の関連性」についての言説は完全に過去のものになってしまったわけではない;

今も月経と犯罪の関連性について説く専門書が存在する。かつて「月経中」と書かれていたところが「月経前」に変わっているだけであったり、いまだに「月経中」と書かれていたりするものもある。情報番組で、女性被疑者や女性被告人について語る際、月経との関連性に言及するコメンテーターもいて、恐ろしい限りである。
(「生理を理由に、無実の女性が殺人犯に仕立て上げられ、死刑判決を受けた「甲山事件」」)
See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131221/1387632716