フランクフルト学派 -ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ (中公新書)
- 作者: 細見和之
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: 新書
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細見和之『フランクフルト学派』*1の第1章「社会研究所の創設と初期ホルクハイマーの思想」では、第一次大戦後の左翼的な危機意識の代表として、ルカーチ*2の『歴史と階級意識』が採り上げられている(p.4ff.)。
マルクスの思想を、カントからヘーゲルにいたるドイツの古典的な哲学の流れのなかであらためて受けとめ、マルクスの思想を再哲学化すること――。大きくはそういう方向にルカーチの著書は寄与しました。(p.8)
- 作者: G.ルカーチ,平井俊彦
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1962
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(前略)ルカーチは『歴史と階級意識』のなかで、「労働者」「プロレタリアート」という言葉を何十回と繰り返していますが、それはどこまでも抽象的な概念であって、そこに生身の労働者、プロレタリアートを具体的に感じ取ることはとうてい不可能です。
実際ルカーチは、彼のもとめるような「階級意識」を現実にはプロレタリアートがただしく獲得しないという問題を受けて、党による階級意識の注入ないし指導ということを語ります。これは結局のところ、党の神聖化へと反転せざるをえない考え方です。党だけがただしい階級意識を保持している、ということになるのですから。
いずれにしろ、『歴史と階級意識』に収められた諸論文からは、『小説の理論』までのルカーチとはまったく異なった印象、それこそインストールされるソフトがすっかり入れ替わったような印象を受けます。私は以前に、ルカーチと同時代の日本のマルクス主義経済学者、河上肇の『貧乏物語』(一九一七年)と『第二貧乏物語』(一九三〇年)を読み比べて、まったく同じような印象を受けました。『貧乏物語』は河上肇の個性に裏打ちされた、大衆性のある優れた著作ですが、『第二貧乏物語』は、河上の個性がすっかり消え失せた、じつに教条的な文体と語彙で延々と書き連ねたものとなっています。これは洋の東西を問わず、いまにいたるまでのマルクス主義の決定的な弱点です。(pp.7-8)
- 作者: 河上肇,大内兵衛
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1965/10/16
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- 作者: ヴェ・イ・レーニン,朝野勉
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2000
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- 作者: ルカーチ,渡辺寛
- 出版社/メーカー: 青木書店
- 発売日: 1965
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さて、『小説の理論』や『歴史と階級意識』を含むルカーチのテクスト(英訳)は、以下で読むことができる;
Georg Lukács Archive https://www.marxists.org/archive/lukacs/
また、青空文庫で読める河上肇のテクスト*8には『貧乏物語』も含まれている*9。『第二貧乏物語』は「作業中」であるという。
*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160125/1453694119
*2:See eg. https://en.wikipedia.org/wiki/Gy%C3%B6rgy_Luk%C3%A1cs https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B8 Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060411/1144765784 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060426/1146020138 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061015/1160883587 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080320/1205977471 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090930/1254288521 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091106/1257482211 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101125/1290654658
*3:このパンフレットについては、http://d.hatena.ne.jp/odd_hatch/20110920/1316471805も見られたい。それにしても、凄い差別用語!
*4:Titus Stahl “Georg [György] Lukács” Stanford Encyclopedia of Philosophy http://plato.stanford.edu/entries/lukacs/
*5:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130806/1375790256 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131011/1381460909 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150114/1421203424
*6:http://www.shinnihon-net.co.jp/general/detail/code/978-4-406-05247-4
*7:See eg. http://d.hatena.ne.jp/oibore_shinsuke/20150911/1441918658