わかる奴はわかる、わからない奴はわからない

スポニチ』の記事;


「NHKは番組で外国語使いすぎ」精神的苦痛受けたと提訴


 NHKの放送番組で外国語が乱用され、内容を理解できずに精神的苦痛を受けたとして「日本語を大切にする会」の世話人高橋鵬二さん(71)=岐阜県可児市=が26日までに、NHKに141万円の慰謝料を求める訴えを名古屋地裁に起こした。提訴は25日付。

 訴状によると、NHKでは報道、娯楽番組を問わず、番組内で「リスク」「トラブル」「ケア」などの外国語が多用されているだけでなく「BSコンシェルジュ」などと番組名にも用いられていると指摘。日本語で容易に表現できる場合でも使われているとし、公共性が強いNHKが日本語を軽視するような姿勢に強い疑問があるとしている。

 NHKは「訴状の内容を確認していないのでコメントを差し控える」としている。

 高橋さんは取材に「質問状を提出したのに回答がなかったので、訴訟に踏み切った。NHKだけの問題ではないが、公共放送は特に影響力が強い。年配者にも分かるような放送をしてほしい」と話している。

 請求額は、地裁で扱える額が140万円を超える額と民事訴訟法で規定されていることに基づき決めたという。


[ 2013年6月26日 10:47 ]
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2013/06/26/kiji/K20130626006090730.html

See also
NHK、外来語がわからないとの理由で提訴される」http://www.huffingtonpost.jp/2013/06/25/adopted_words_n_3498850.html


「年配者」だからわからないというよりも、「年配者」でもわかる奴にはわかるし、「年配者」ではない若造でもわからない奴にはわからない、ということだろう。「年配者」、70歳以上ということだと所謂60年安保世代、60歳以上ということだと所謂団塊の世代。何れにせよ、戦後教育を受けた世代でありロックンロール以降の世代である。アプレ・ゲールとかアベック(ママ)といった外来語を発明したのは、さらに上の戦中派ということになるか。
さて、ここで告発されている(というか記事で採り上げられている)外来語のうち、「コンシェルジュ」はともかくとして、「リスク」や「トラブル」や「ケア」に関しては、NHKに同情してしまう。「リスク」は〈危険〉とは微妙ではあるが決定的に意味が違う言葉として使われている*1。「トラブル」も文脈に応じて、揉めごととか事故とか不具合とかと使い分けなければいけないところ、「トラブル」を使えばひとつで済ませられる。「ケア」も介護やお世話、さらには配慮や気遣いといった意味をひとつの言葉に凝縮して使うことができる*2。どの言葉も言い換え(翻訳)の提案がななされているけど、片仮名言葉では辛うじて繋ぎ止められていた原語の含意がカットされているような気がするのだ。そのようなリスクは常に配慮されるべきかとは思う*3
とはいっても、片仮名言葉を全面的に肯定しているわけではない。それについては以前のエントリーを参照していただきたい*4

*1:漢語ではriskは「風険」と訳されている。

*2:あと、キュア(cure)との対比で韻を踏むことができるとか。

*3:もうひとついえば、翻訳(言い換え)によって、漢語/漢字或いは大和言葉といった別の文脈を背負うことになる。

*4:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130316/1363453607