関西/関東

『朝日』の記事;


煮抜き、お造り、関東炊き…消えゆく関西たべもの言葉

2010年2月8日5時16分


煮抜き、五目ずし、関東炊(かんとだ)き……。「食」に関する関西ことばが日常生活から急速に姿を消している。武庫川女子大学言語文化研究所(兵庫県西宮市)の岸本千秋助手(44)の調査でわかった。「まずい」を意味する「もみない・あじない」は絶滅寸前だ。

 調査は2008年11〜12月、武庫川女子大の学生124人と、同研究所に普段から協力している一般の20〜60代の158人を対象にアンケート方式で実施。関西とそれ以外の地域で異なる呼び名を持つ「食」に関する言葉を並べ、どちらをよく使うか選んでもらった。一般の回答者には、子どもの頃どちらを使っていたかも答えてもらった。

 その結果、60代以上のほぼ半数かそれ以上が子どもの頃に使っていた「なんば」「ごんぼ」「関東炊き」「ばらずし・五目ずし」という単語が、それぞれ「トウモロコシ」「ゴボウ」「おでん」「ちらしずし」に変わっていた。学生は、これら四つの関西ことばを使う割合が1割に満たなかった。「もみない・あじない」は30代以下でほぼ消滅。「煮抜き」(ゆで卵)も50代以下ではほとんど使われなくなっていた。

 「かしわ」「お造り」は学生の1〜2割が今も使うと答えたが、すべての世代で「鶏肉」「お刺し身」を使う割合が拡大。60代でも「鶏肉」「お刺し身」が5割を超えていた。

 地方の言葉が消える背景としてテレビの影響が指摘されている。岸本助手は「テレビ世代が親となり、子世代へ伝承する言葉として認識されていない」と、関西ことばの衰退が加速していると指摘する。

 一方で西日本を中心に使われる「ミンチ」は、40代以上で子どもの頃より使う人が増え、「ひき肉」を上回った。学生の間でもほぼ半々と健闘している。岸本助手は「かつて関西で肉と言えば牛肉を指したことから、豚や鶏を『肉』と呼ばないよう英語から採り入れられたといわれる。外来語の持つ新しそうな印象のために生き残ったのかもしれない」と話す。(吉野太一郎)
http://www.asahi.com/national/update/0201/OSK201002010078.html

関西(近畿)とはいっても、大阪、京都、奈良、紀州、神戸等々の差異はあり、大阪府の中でも和泉、河内、摂津ではそれぞれ違うということはあるのだろうと思う。
「かしわ」というのはずっと端午の節句に食べる柏餅しか連想できなかったのだが、昔神田川俊郎という人が出ている料理番組を視ていたら、神田川さんが「かしわ」というので、一瞬?と思ったが、画面からやっと大阪では鶏肉を「かしわ」というのかと納得したということがあった。
「関東炊き」って関東煮と普通書かないか。そもそも炊くという動詞の意味が関西と関東ではずれていて、関東人の感覚からすれば、炊くのはご飯だけであって、「おでん」のようなものはにるということになる*1。だから、関東煮の場合でも、「煮」と書いて、たくと読ませるのでは? ところで、関東煮は関西で衰えたとしても、中国では生きている。中国(上海)のコンビニで、「おでん」は「関東煮」として売られているからだ*2
「お造り」というのは逆に関東へ進出して来ているように思える。数年前、刺身といったら、或る方から「お造り」が正式の言い方だと注意されたということがある。「刺身」ではなく「お造り」というと、価格を1000円は上乗せできそうな感じ。関西で「お造り」が衰えているというのは、たんにみんな安手の居酒屋とかばっかり行って高級な店に行かなくなったということなのでは? 
ところで、標準語化による関西特有の語彙の喪失というのは、天皇が東に移って以来のことであり*3田辺聖子さん(『大阪弁ちゃらんぽらん』、『大阪弁おもしろ草子』など)も指摘していたと思う。「テレビ世代が親となり、子世代へ伝承する言葉として認識されていない」ということだが、TVの影響は両義的であるとも言えよう。関西弁が全国に伝播したのもTVの影響が大であるからだ。
大阪弁ちゃらんぽらん (中公文庫 A 38-5)

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大阪弁おもしろ草子 (講談社現代新書 (786))

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See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090403/1238776382