靖国神社或いは宗教について

『毎日』の記事なり;


<麻生外相>靖国神社、非宗教法人化を視野に検討を

 麻生太郎外相は16日、東京都内で講演し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題について「国家の英霊を祭るという大事なことを一宗教法人に任せているところに問題があるのではないか」と指摘した。同神社の非宗教法人化を視野に第二次世界大戦A級戦犯分祀(ぶんし)方法を検討する考えを示唆したものとみられる。
 麻生氏は講演で「誰が首相になろうとも、政府が靖国神社に対して分祀しろなどというのは国家権力の宗教に対する介入だ」と主張。現行憲法下の政教分離原則から、政府がA級戦犯分祀を働きかけるのは不適切との考えを改めて示した。ただ、同時に「英霊や遺族は静かにお参りにきてもらいたいという気持ちだと思う。そういう状況をどう作るかが政治家に与えられている仕事だ」と述べ、靖国参拝が問題視されない環境を整える必要性に言及した。
 麻生氏はこれまでも靖国問題の解決策を独自に検討していると繰り返し表明。具体案への言及を避けつつ「天皇陛下の参拝が一番」「A級戦犯は戦死でなく法務死」などと述べ、A級戦犯分祀を念頭に置いたとみられる発言を繰り返してきた。
 靖国神社は戦後、国家神道を廃止するGHQ(連合国軍総司令部)の「神道指令」で国の管理から離れ、宗教法人となった。宗教法人でなくなれば、政府がA級戦犯分祀を働きかけることが憲法上は可能となる。自民党野中広務官房長官が99年に特殊法人化を検討する考えを表明したことがある。【中田卓二】
毎日新聞) - 5月17日3時5分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060517-00000009-mai-pol

まず、「現行憲法下の政教分離原則から、政府がA級戦犯分祀を働きかけるのは不適切」というのは正当であろう。しかし、同時に「現行憲法下の政教分離原則」において靖国神社を政府が「非宗教法人化」するというのも「不適切」であり、困難であろう。
また、これもけっこうありふれた論点かも知れないが、「宗教」を抜きにした慰霊が可能なのかということは重要だろう。もし不可能であれば、国家が「国家の英霊を祭る」ことに関与することの是非も問題になるだろう。また、可能だという人は、非常に狭い、「宗教」を所謂組織宗教に限定する宗教観に立っているのかも知れない。
「宗教法人でなくなれば、政府がA級戦犯分祀を働きかけることが憲法上は可能となる」というのは、麻生氏というよりも中田という記者に帰属されるべきだろうが、これが憲法解釈としてありなのかどうかは知らない。ただ、宗教学的に言えば、「宗教」は「宗教法人」に還元できるものではなく、「宗教法人」は「宗教」のひとつの法的な存在形態にすぎない筈である。私見によれば、現行の宗教法人法も、「宗教」を法律以前的に存在するものとして、その上で申請があったものについて、公益法人として認証しようという趣旨だと思う。