「悲しみ」に由来する

岡野八代*1『ケアの倫理』から。
「ケアは〈気にする/気にしない〉といったわたしたちの微細な心の動きまで意味してしまう」(p.10)。


ケアという言葉の語源を遡れば、現在の意味とは相反するような意味が込められていることも分かってくる。ケアは、古ゲルマン語のkaro(悲しみ)に由来し、そこから派生する古英語caruは、悲しみのほか、気がかり、不安、心配、嘆き、困惑などを意味している。つまり、ケアは、思わずそこに注意を向けてしまうような、心の動きを表している。そうした意味の複雑さから、ケアという活動は、やりがいを感じさせたり、大正への愛着を生んだりする一方で、極度の疲労と、時に嫌悪感を伴うような労苦ともなる。(ibid.)