知らなかったマティス

国立新美術館の『マティス 自由なフォルム』*1を観た。入館したのが夜の7時を回っていたので、かなり慌ただしかったけれど。
この展覧会の目玉はやはり晩年の切り紙絵の大作「花と果実」(410 × 870cm)の日本初公開、そしてマティスがデザインした「ヴァンスのロザリオ礼拝堂」の内陣の再現ということになるのだろう。さて、アンリ・マティス*2ならよく知っている。ヴィヴィッドな色彩とリズミカルな運動性のあるフォルム。しかし、この展覧会で気づいたのは、そうしたマティスらしいマティスではないところのマティスだった。マティスは若い頃、絵画と並行して彫刻(木彫やブロンズ)も実践していた。これも知らなかったマティスなのだけど、そこに感じたのはリズミカルな運動性のあるフォルムとは真逆のこと。あらゆる運動を吸収してしまうような物質性(塊=マッス)へのこだわり。これが何よりもいちばんのショックだった。勿論、この展覧会でマティスらしいマティスに触れる幸福を享受することは否定されないので、安心すべきだろう。
それから、マティスのテキスタイル・デザイナーやバレエの衣裳デザイナーとしての側面も紹介されている。「ロザリオ礼拝堂」に関して、彼は司祭の服(カズラ)のデザインも行っているのだった。