或る効果

レベッカ・ソルニット*1『暗闇のなかの希望』から。


(前略)バイアグラ*2が絶滅を危惧される動物に良いということがわかってきた。中国医学の漢方では、アオウミガメ、タツノオトシゴ、ヤモリ、ズキンアザラシ、タテゴトアザラシや、カリブーの生えたての枝角である袋角といった動物器官が、性欲減退と勃起不全に処方されてきたが、この新薬のおかげで需要がなくなったのだ。バイアグラの究極の効果が、地球上から絶滅する危機に瀕した動物の生存にあるのかもしれないとしたら、世界の不思議な展開のなかで、これ以上に滑稽な形のものがほかにあるだろうか? バイアグラ漬けの性愛の苦労は、利己的どころか、カリブーの袋角がもはや刈り取られることがなくなり、柔らかいままに生命力の血が流れ、小さな木のような枝角にまで育つようになるための秘かな企てだということだろうか? シロッコ風は、アフリカの砂漠からヨーロッパの湿潤地帯に砂塵を運ぶが、コヨーテの屁のごとく強力で、道徳を超越した別種の風は、中国の閨房から北極圏ツンドラへと効能を運ぶ。(p.167)