スッポンの仲間?

Via https://nessko.hatenadiary.jp/entry/2023/09/21/142001

徳島県内で発掘されたという「アドクス」という亀のことが話題になっている。
NHK徳島放送局によると、


勝浦町でカメ類化石発見 「アドクス属」では最古時代のものか
09月19日 18時21分


勝浦町で見つかったカメ類の化石は、スッポンの仲間「アドクス属」としては世界で最も古い時代のものとみられることが徳島県立博物館などの調査でわかりました。
県立博物館では、同じグループの進化やルーツをたどるうえで、重要な化石だとしています。

徳島県立博物館福井県立恐竜博物館、それに福井県立大学恐竜学研究所などが勝浦町の1億3000万年前の地層で共同で発掘調査を行ったところ、500点以上のカメ類の甲羅の化石がみつかりました。

詳しく分析した結果、このうち一部の化石に特徴的な凹凸や溝があったことから、スッポンの仲間「アドクス属」の甲羅の化石だとわかったということです。

これまでに発見されている「アドクス属」の化石は、福井県や福岡県でみつかった1億2000万年前のものが最も古いとされてきましたが、今回見つかった化石はさらに、およそ1000万年前の世界で最も古い時代のものとみられるということです。

県立博物館の小布施彰太学芸員は「同じグループの進化やルーツをたどる上で重要な化石だ。今後、この化石が新種かどうか研究を進めていきたい」と話していました。

この化石は、9月22日から徳島県立博物館で一般公開されます。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tokushima/20230919/8020018611.html

さて、この「アドクス」だけど、NHKのみならずどのメディアの報道でも「スッポンの仲間」という形容がされている。Wikipediaで「アドクス」の項*1を見ると、「アドクス属」というのは「カメ目」「潜頸亜目」 「アドクス科」に属している。本文には、

アドクス は絶滅した水棲カメ類の属の一つ。以前はメキシコカワガメ科に属すると考えられていた。白亜紀末の大量絶滅を生き延びたが、古第三紀漸新世に絶滅した。17種が知られている。

アドクスは、角質のプレートに保護され、丸い輪郭の平らな甲羅をもっていた。甲羅は約80cmの長さに達した。この大型の淡水性のカメは雑食性だった。北アメリカの白亜紀後期から暁新世まで生息していたが、アジアでは漸新世中期にも存在していた。

アドクスは、カナダ、アメリカ合衆国、モンゴル、中国、日本、カザフスタンタジキスタンウズベキスタン白亜紀から漸新世までの地層から見つかっている。
と記されている。
ここには、「スッポン」との関係を示す記述は全くないのだった。しかも、「大型の淡水性のカメ」といっているぞ! 少なくとも現在の「スッポン」は「大型」ではなく小型のカメといえるんじゃないだろうか*2
より上位の「潜頸亜目」に止目してみる*3。実は「潜頸亜目」には私たちが一般に「カメ」と呼んでいる動物の殆どが集まっているのだった。ウミガメ*4カミツキガメ*5、イシガメ*6、リクガメ、鼈はみな「潜頸亜目」に属している。なので、「アドクス」が「スッポンの仲間」だと言われると、まあ嘘ではないのだけど、それと同等な仕方で海亀やカミツキガメの仲間だと言えるんじゃないか? と思ってしまうのだ。それとも、「アドクス」が鼈に特別に近いという(Wikipediaの筆者たちもまだ把握していない)最新研究があるのだろうか?