実在論?

渡辺靖*1『白人ナショナリズム』によると、米国の「白人ナショナリスト」は自らrace realistと名乗ることが多いという(Eg. p.10)。渡辺氏はそれを「人種現実主義者」と訳している。しかし、これだと「現実主義」ってどんな主義なのか、よくわからない。理想主義(idealism)と対立するものなのか。本を読み進めていくと、渡辺氏は「社会構築主義vs. 人種現実主義」という項を設定している(pp.124-125)。「構築主義(constructionism)」と対立するのか! であれば、race realismは「人種現実主義」というより人種実在論と訳した方がわかりやすい。つまり、「人種」が自体として実在するという考え。race realistであるジェレド・テイラーは「人種間には遺伝子によって規定され、継承される明確な差異がある」と主張している(p.124)。
ただ、私見によれば、「構築主義(constructionism)」と対立するのは本質主義(essentialism)だろう。一方、存在論用語としての実在論(realism)と対立するのは観念論(idealism)。まあ、本質主義というのは本質が実在するという考え方ではあるけれど。