「西洋かぶれ」

菊地章太『儒教道鏡・仏教』の「はじめに」に曰く、


講談社の山崎比呂志さんが大学の研究室にたずねてきた。
東アジアの儒教と仏教と道教をまとめて紹介する本を書かないかという。
大それた企画である。……でもしばらく話をしているうちに、どうもこの編集者氏、中国やアジアに興味ある人とはなにかしらちがった雰囲気があるような気がしてきた。
「山崎さん、大学で何を専攻したんですか?」
「フランス文学。菊地さんは?」
「フランス美術」
なんだ、おたがいフランスかぶれか、どうりでちょっとヘンだと思った。(p.3)
この本は、「西洋かぶれが東洋をちょっとのぞいてみたら」という感じの本なのだという(p.4)。
「はじめに」で明かされている「結論」は、

東アジアの思想空間はシンクレティズムの花園なり。――これが結論。
シンクレティズムとは「ごたまぜ」という意味である。儒教と仏教と道教がごたまぜになっている。純粋ではない。けれどゆたかさがある。そしてそれこそが宗教というものの現実の姿ではないか。(ibid.)