しれっと

坂野潤治山口二郎『歴史を繰り返すな』*1から、山口二郎氏の発言;


(前略)
選挙制度改革を行ったことも、いわば政党再編を促すための競争の舞台を整備するという意味がありました。ただ、いかんせん小選挙区プラス比例代表並立制という仕組みでは、政党の再編は起こりにくい。小選挙区がかなり大きな比重を占めている以上、政治家は寄らば大樹の蔭という動機で動くことになって、理念に沿った政党の再編はむしろ疎外されるという結末になってしまったんです。
(後略)(p,83)
この本が出たのは2014年。まさに正論なのだが、一方で山口先生、政権交代のための小選挙区制を煽っていたということも思い出した*2。勿論、小選挙区制がなければ民主党政権誕生もなかったわけだけど。また、1990年には、小選挙区制が有効に機能するための前提的措置に言及していたことも事実ではある。
「政治改革四法案は最初の一歩」*3(in 『日本政治の同時代的読み方』)から;

日本人は小選挙区制をしけば全国津々浦々で二大政党の候補の激しい一騎打ちが展開されると期待しているふしがあるが、それはまったくの幻想である。米国の場合、再選を求めて立候補した現職の九割以上が当選している。つまり、新人が現職を破ることはきわめてまれでしかない。また、英国では六五一の下院の議席のうち、保守・労働の二大政党がそれぞれおよそ二〇〇ずつの指定席をもち、残った三分の一程度の草刈り場をめぐって競争を展開する。言い換えれば三分の二は無風選挙である。現職議員がいったん安定した地盤を築けば、新人はますます挑戦の意欲を失うという悪循環が始まる。米国では現職の多選の弊害があまりに著しいので、市民も国会議員の任期制限運動に乗り出した。九二年一一月にはカリフォルニア、ミシガンなど一四の州で国会議員の任期を一〇年程度に制限する法案が各州の住民投票を通して採択された。(p.117)

第一に、現在の中央集権システムを温存したままで小選挙区制を導入すれば、従来にもまして腐敗と議席の私物化を助長するという弊害が予測できる。小選挙区制のもとでは、現職議員が公共事業や補助金の個所付け、許認可の際の運動など地域に関するありとあらゆる利益誘導を一手に独占できる。そうすると、その地域の市町村の首長、利益団体が現職議員の傘下に組み込まれることとなる。そうして現職議員の地盤が安泰になれば、ますます多選、世襲などの弊害も強まるであろう。したがって、小選挙区制の導入を真の政治改革に結びつけるためには、権限、財源の徹底的な分散を図り、利益誘導に関する国会議員の関与の余地を小さくすることが不可欠の必要条件となる。(p.118)