蠟燭話

吉村隆真*1「灯火とロウソク」『TSUKIJI』(築地本願寺)890、pp.18-19、2022


曰く、


ロウソクの灯火は点火と同時に遅かれ早かれ必ず消えることも約束されています。
ただ、消え方には2種類あります。ロウソクを完全燃焼して自然と消える場合と、まだ残りがあるのに、風によって途中で吹き消されてしまう場合です。
平均寿命を上回り、ご長寿を全うして老衰で息を引き取る高齢者の寿命は、ロウソクを燃やし尽くして自然と消えた灯火に例えたくなりますし、不慮の事故や事件、予期せぬ病気や災害によって失われる若者や幼児の寿命は、多くを残しながらも、突風によって吹き消されてしまった儚い灯火に思えるでしょう。
世間では、平均寿命を目安や参考にして寿命を論じていますが、これほど当てにならないものはないと断言できます。
いのちの灯火も必ず消える瞬間を迎えます。それは、遠い未来かもしれませんし、今日かもしれません。原因と条件との複雑な関係によって、結果は絶えず変動しますので、最初から決まった寿命の長短などありはしません。
散歩中の事故死、誤嚥による窒息死、災害の難から逃れようと避難所に向かう途中、不注意で絶命した人もいます。誰しも「死ぬとき」を知りませんが、「死ぬこと」は決定済みですから、絶対に逃れられません。病気や事故など、死の「縁」ばかりを問題にしている私たちですが、改めて死の「因」に目を向けたいものです。
ロウソクの灯火は必ず消えます。途中で消えるか、燃え尽きて消えるかの違いがあるだけです。残りの時間を心配するよりも、ただ「いま」「ここ」に全集中で生きるのみです。私たちは生を授かった瞬間に、すでに死の宣告を受けているのですが、そのことを忘れたまま生きているようです。
燃え尽きる蝋燭ということで、ベタな話だけれど、ディープ・パープルのBurn*2を思い出す*3
Burn

Burn

Amazon

*1:熊本市良覚寺住職。

*2:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100413/1271162081

*3:アルバム・ジャケットの裏。