平沼赳夫にはやはりプレゼントしない

先週は日本政界において、また所謂政治系blogにおいても、与謝野馨自民党離党、それから平沼赳夫との新党結成のネタで持ちきりだったようだ。まあ、自民党の分裂というのは色々な意味において慶事であるとはいえるのだが*1、その新党の名前は結局「たちあがれ日本」というのに落ちついたらしい。「たそがれ」というのも囁かれていたが。
さて、最近(といっても昨日あたりから)他人に楽曲をプレゼントするのがマイ・ブームみたいになっているのだが、「たそがれ」の平沼赳夫にはブライアン・フェリーがカヴァーした思い切りダウナーな”You Are My Sunshine”*2がいいかなと思ったのだ。この”You Are My Sunshine”にはオリジナルの脳天気さは微塵もなく、ここでいうsunshineは正午のそれではなく(明らかに)午後5時以降のsunshineだ。”Please don’t take my sunshine away”という部分の切なさ。”You Are My Sunshine”はそもそも選挙のキャンペーン・ソングとしてつくられた。正調の”You Are My Sunshine”は例えばコーエン兄弟の『オー・ブラザー!』の中とかで聴くことができる。ブライアン・フェリーが脱構築*3した”You Are My Sunshine”は何度も聴いていると、なかなか感動的な曲なのだ。エヴァーグリーンな脳天気さの不可能性を示すことにおいて。そして,(フェリーも意識している筈の)ボブ・ディランが”You Are My Sunshine”を歌ったとしたら、どんな感じになるのかなと思った。というわけで、平沼赳夫にプレゼントするわけにはいかない。その代わり、彼にはクィーンの「二本足をつけた死(Death on Two Legs)」! それから、城内実には(ベタではあるけど)ディープ・パープルの”Burn”でしょう。

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オペラ座の夜

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Burn

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さて、「たちあがれ日本」が「文学者らしい発想」だとは思わないが、「藤井孝男元運輸相が「サムライ」を主張」したという*4沢田研二の「サムライ」(阿久悠作詞)について、「平沼赳夫の応援歌かと思うような歌」という評*5。たしかに、「ハーケンクロイツ」の腕章というえぐい恰好で当初は歌われ、フランソワーズ・モレシャンがそれを批判したということがあったが、歌詞では「男は誰でも 不幸なサムライ」と歌われている*6。片仮名の「サムライ」だけど、以前それに言及したときにも触れなかったのだけど*7、これはそもそも仏蘭西起源。アラン・ドロンが主演したジャン=ピエール・メルヴィル監督の映画『サムライ(Le Samourai)』*8。片仮名の「サムライ」というのは元々フレンチだったわけだが、阿久悠沢田研二の歌でもそうだけれど、samouraiの重要な特性はその孤高性。つまり、samouraiは群れない、徒党を組まない。だから、「新党」の名前に「サムライ」を使うというのは或る種の論理的矛盾なのだ。阿久悠沢田研二に戻れば、1970年代後半にはほかにも昔の映画をネタにした曲を発表していたので、「サムライ」はその一環であるとはいえる。「勝手にしやがれ*9ゴダールジャン=ポール・ベルモンド)、「カサブランカ・ダンディ」*10ハンフリー・ボガート)。
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