江ノ島の岩戸


『壽 初春大歌舞伎』*1の「難有浅草開景清 岩戸の景清」(河竹黙阿弥*2作)と『義経千本桜』「川連法眼館の場」はNHKの生中継で観た。
「岩戸の景清」。平家の遺臣、悪七兵衛景清*3尾上松也)は江ノ島*4の岩窟に籠って源頼朝に呪いをかける。そのために、世界は暗黒に陥ってしまった。北条時政和田義盛、千葉介常胤といった鎌倉方の武将たちは岩窟前に集結して、闇を祓うための神事を始める。やがて、景清が姿を現し、刀を引き抜くと、朝日が差し込む。『古事記』の天の岩戸のエピソードと『平家物語』的な世界がマッシュ・アップされた感じの小品。1978年以来44年ぶりの上演なのか*5


高天原江ノ島
アマテラス/悪七兵衛景清

という類比が成立する。ジェンダーの逆転はあるのかどうかということなのだけど、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、アマテラスが女神として観念されていたのか、男神として観念されていたのか、ちょっとわからないのだ。大まかにいえば、アマテラスの男性化は神仏習合と軌を一にしている。
景清は悪役(ヴィラン)というべきなのか、それともダーク・ヒーローというべきなのか。多分、善悪の手前的な存在といえるのだろう。「悪七兵衛景清」の「悪」。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけては、善悪の手前にある力の体現を意味していた筈だ。鎌倉悪源太義平。悪左府藤原頼長)。端的にStrong! 勿論、世界の始まり(夜明け)においては善も悪もまだ分化していない。
ところで、「市川猿之助」というと、先ずイメージするのは先代の方なのだった(汗)。