弁財天*1には最近ちょっと思うところがあるのだった。
『朝日新聞』の記事;
「さい銭盗」ということで、最初どんな荒れ寺なんだよと思ったのだが、「布施弁天東海寺」*2は平安初期に開山したと伝えられる真言宗の古刹で、上野不忍池や江の島とともに「関東三弁天」の一つに数えられ、柏市主要の観光地でもあるのだった。
26円さい銭盗の疑い 発見の住職「願いを奪わないで」2016年9月12日19時58分
千葉県柏市布施の「布施弁天東海寺」境内のさい銭箱から26円を盗んだとして、柏署は11日、 男(52)を窃盗容疑で現行犯逮捕した。「小銭がほしかった」と容疑を認めているという。
署によると、男は11日午前10時10分ごろ、さい銭箱から26円を盗んだ疑いがある。寺の下村法之住職(41)が、男がさい銭箱から金を盗み、ポケットに入れているのを見た。声を掛けると「さい銭盗では警察は動かない」などと言ったため、署に通報したという。
署や寺によると、5年前からさい銭盗の被害に遭っており、修理代節約のため、箱の施錠を外し、住職らが見回りをしてさい銭を回収していたという。
寺ではほかにも同様の行為をしている人がいると見ており、下村住職は「さい銭は人々が願い、祈りを込めて投じる。願い、祈りを奪う行為をやめてほしい」と呼びかけている。
http://www.asahi.com/articles/ASJ9C73DNJ9CUDCB001.html
まあ見つかった時の開き直りの仕方が住職を怒らせて、逮捕ということになったのだろうか。賽銭泥棒とか無銭飲食とかの報道の場合、容疑者の所持金の額が言及されることが少なくない*3。「所持金」の額によって、読者は容疑者に同情したりしなかったりする。もしこの52歳の男の所持金が零だったら、警察に突き出すんじゃなくて容疑者に食べ物とかを与えるのが(字義的な意味における)「布施」というものじゃないかという批判が向けられていたかも知れない。まあ、そういう緊急性はなかったのだろう。
「5年前からさい銭盗の被害に遭って」いる。全国的に賽銭泥棒が増えているのかどうかは知らない。ただ、日本の寺には(世界的に見て)寺には不可欠な風景が欠けている。印度にせよ、タイにせよ、中国にせよ、寺の門前といえば、善男善女の懐をお目当てにした乞食が群れている*4。多分、ヨーロッパ(特にカトリック圏)でもそうだろう。この乞食の欠如と賽銭泥棒というのは関係があるのかも知れない。
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090301/1235918301 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151214/1450066899 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151221/1450668431 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160130/1454171340 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160422/1461259138 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160624/1466766644
*2:http://www.fusebenten.com/ See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E5%AF%BA_(%E6%9F%8F%E5%B8%82)
*3:See eg. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120611/1339438869 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131123/1385169597 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150216/1424016415 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160703/1467508738
*4:功徳を積ませていただいたことを感謝しなければいけないのはお金を挙げる側であって、乞食ではない。