カール・ルイスとか

『日刊スポーツ』の記事;


五輪解説で反響「~っす」いい意味で裏切り、相手への敬意と親しみ同時表現
8/16(月) 9:19配信


日刊スポーツ

<ニュースの教科書>

東京オリンピック(五輪)ではスケートボード・ストリートの瀬尻稜さん(24)の解説が大反響を呼びました。トレンドワードの1位になり、他の解説者にも広がった「ゴン攻め」が新語・流行語大賞にノミネートされるのは確実視されているほか、「鬼やばいっすね」「いや~半端ねえっす」といった言葉遣い。NHKで解説者が使ったのは初めてとみられています。「っす」を「ス体」と命名した社会言語学者関東学院大教授・中村桃子さんに聞きました。【取材・構成=中嶋文明*1


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「いやーすごいっすね、これは」「おおヤベー、やばい技ばっかっすよ」「男子でもできる人、少ないと思うんすよ。さすがっすねー」-瀬尻さんの「ス体」は「ビッタビタ」「ゴン攻め」など独特の表現とともにバズりました。解説者の言葉遣いがオーソドックスだったスケートボード・パークの中継では、「何か物足りないと思ったら、解説が瀬尻さんじゃないからだ」とツイートが広がり、“瀬尻ロス”まで生まれました。

「ス体」は助動詞「です」の短縮表現ですが、「です」にはない役割があります。距離が生じがちな「です」に対し、「ス体」は相手に対する敬意と親しみを同時に表現するのです。中村さんは「日本語には親しみを込めた丁寧語がなく、ス体はその空白を埋めるように広がった」と分析します。

瀬尻さんの解説について、中村さんは「選手が『ス体』で答えるのはこれまでもありましたが、オリンピックという国家的な行事で、NHKという公共放送に専門家として登場した、その道のレジェンドが『ス体』を使ったのは初めてではないでしょうか。すごくポジティブに受け止める声が多いのは、いい意味で裏切られたからだと思います。オリンピックは『ニッポン』『ニッポン』とすごくナショナリスティックになるのに、瀬尻さんはどの国の選手であれ、いいトリックを見せると『おおっ~』って喜ぶ。転んだら『痛そうっすね』と心配する。スケボーってこういうスポーツなんだ、こうやって楽しむんだと教えてくれた。それが新しかったと思います」と話します。

使い方にも新しさがありました。敬意と親しみの表現である「ス体」は、後輩が先輩に話すときに使います。中村さんがこれまで集めてきた用例では、先輩が後輩に対して使う例はありませんでした。しかし、「瀬尻さんの『ス体』は先輩の『ス体』」(中村さん)でした。解説者はその競技について、アナウンサーや視聴者より先輩です。先輩が「ス体」を使ってフランクに解説したということだけでなく、瀬尻さんは後輩の選手たちに対しても使っていました。

優勝した堀米雄斗(22)に対し「雄斗おめでとう。いろんな練習乗り越えて、この場でしっかり優勝してホントかっこいいっす」。決勝に進めなかった白井空良(19)に対しては「よくやったっすよ。かっこよかったすよ、空良」。青木勇貴斗(17)に対しても「めちゃくちゃ頑張ったっすよ。かっけーっす」と声を掛けました。中村さんは「フラットな人間関係を求める今の社会で、『ス体』の新しい可能性が出てきたと思います」と話しています。

中村さんによると、最も古い「ス体」は1954年10月12日の朝日新聞サザエさん」です。浪花節をうなりながら仕事をしていた左官屋さんが、仕事が終わってもうなり続け、お茶を持ってきたフネに「仕事はすんだんすが、ふしがのこってたもんで」と照れながら言い訳します。促音「っ」がある「すんだんっすが」でないことから、「っす」は「す」より新しい表現と考えられるそうです。

その後、体育会を中心に男子学生の間で広がり、90年代に入ると、後輩の男子学生が先輩に対して敬意と親しみを示す表現として定着します。「新しい丁寧語」「新敬語」として言語学者の研究も本格的に始まりました。

中村さんによると、CMで女性が使用した例として早かったものに2007年の松下奈緒があるそうです。イー・モバイルのCMでフレーズは「指、来たっす」。ユビキタスのダジャレで、12年に始まる上戸彩大阪ガス「さすガっス」へと続きます。本来の「ス体」としては、綾瀬はるかが12年、アクエリアスビタミンガードで「今日も充実っす」「充実レモン味っす」と言っています。

ただ、実社会で「ス体」を使うことに対する反発は強く、中村さんによると、14年に読売新聞の女性向け掲示板「発言小町」で、「『っす』は丁寧語ですよね」という投稿を巡って騒動が起こったと言います。

トピ主は「ずっと『っす』を丁寧語と解釈していたのですが、私の『マジヤバイっすね』発言に上司からマジ見下ろされた気がしました。ヤな奴。『っす』は丁寧語ですよね」と投稿しました。すると、344件のレスがあり、中村さんの分析では9割は丁寧語ではないという回答でした。「あなた、いくつになるの?」「小学校、ちゃんと行きましたか?」「汚い恥ずかしい言葉だから直しなさい。勉強やり直し!!」。クソミソです。

CMではその後、新しい「ス体」が次々と現れます。auの三太郎では、菅田将暉演じる鬼が「あ、桃ちゃん、久しぶりっす~」「けんかの後はもう友達っすよね~」「鬼退治とかまじ勘弁っすよ~」とチョー軽い「ス体」を連発しました。サントリーオールフリーでは黒木華が「みんなが好きだから、好きになったわけじゃないですから」と打ち明けます。川の音に消されて、桐山漣が「え?」と聞き返すと、「こっちのことっす」と言いました。女心を表現した「ス体」です。

「日本人は日本語を正しいか正しくないかという観点から見る人が多くて、敬語の使い方と若者言葉がいつも問題になります。今までは正しいと言われていた言葉遣いをすれば、それで済んでいましたが、多様性の時代では自分で選ばなければいけない。瀬尻さんは今までの解説者と同じ話し方をしても良かったけれど、スケボー文化、カルチャーを伝えたいという意思があって、自分らしい、いつもの話し方を選んだと思うんです。選ぶことによって自分の価値観が表現される時代ですよね」と中村さんは話していました。


◆中村桃子(なかむら・ももこ)1955年生まれ。昨年、出版の「新敬語『マジヤバイっす』 社会言語学の視点から」(白澤社)で、「っす」を「ス体」と命名した。「女ことばと日本語」(岩波新書)、「<性>と日本語-ことばがつくる女と男」(NHKブックス)、「『自分らしさ』と日本語」(ちくまプリマー新書)など著書多数。

文化庁国語に関する世論調査」 昨年9月に発表された2019年度の調査で、「国語が乱れていると思う」と回答した人は66・1%。「敬語の使い方」(63・4%)が1位、「若者言葉」(61・3%)が2位となっている。ただ、「乱れていると思う」と回答した人は5年前に比べ7・1ポイント減少し、20年前の1999年度に比べると19・7ポイントも減っている。文化庁は「敬語」については<1>表現形式の簡素化(簡素な敬語の形が好まれるようになった)<2>親疎の関係重視(上下関係による使い分けが弱まり、相手と親しいかどうかという距離感を重視)-が進んでいるとみている。

◆中嶋文明(なかじま・ふみあき)1981年入社。大学に入り、最初に入部したのはフリスビー同好会でした。一応は運動系サークルなので上級生に対しては「ス体」を使っていました。今回、瀬尻さんに会って、話を聞くのを楽しみにしていたのですが、本業のプロスケーターの仕事で、ビデオ撮影に入ってしまい、かないませんでした。マジ残念っす。
https://news.yahoo.co.jp/articles/02df69db1959615e0c242790141615150bc478ba

「体育会」というと大学だけど、それよりも中高の部活というイメージはある。
カール・ルイスが出て、「かーるいっすね」(軽いすね)と言うCMがあったと思うのだけど、何時頃のものだったのか、さらにはスポンサーの名前も思い出せないのだった。