「路線バス」に乗る田中小実昌

荒川洋治*1「乗りついで生まれる新しい旅」『毎日新聞』2020年7月4日


田中小実昌*2『ほのぼの路線バスの旅』の書評。
何だかTV番組のタイトルみたいな「紀行文」。


都内の自宅から「西へ西へのバス旅」の記録だ。乗合バスを乗り継ぎ(高速バスは乗らない)、首都圏、東海道山陽道と進み、鹿児島に着くまで二〇年を要した。それもそのはずだ。たとえば千葉・津田沼から東京へ帰りつくのに「足かけ三日かかった」。鉄道はあってもバスはないから遠回り。日が暮れたら、その街の吞み屋で飲んで宿泊もしくは東京に戻り、現地から再スタート。記録をめざすものではない。単に乗るだけの、どこにも焦点のない旅。そこに新しい世界が開く(後略)
ところで、荒川氏、『ポロポロ』を「昭和後期のもっともすぐれた小説の一つ」と言っている!