「生殖補助医療法」を巡って(柘植あづみ)

岩崎歩、渡辺諒「「産みたい」尊重される環境を」『毎日新聞』2020年12月17日


昨年成立した「生殖補助医療法」を「拙速」だとする柘植あづみさん*1(医療人類学)へのインタヴュー記事。
先ず、第三者による「精子卵子提供」*2の現状;


三者精子を使う人工授精で、約2万人が生まれたと推計されます。卵子については無償ボランティアからあっせんするNPO法人があるほか、一部の医療機関では姉妹や友人間に限り実施されています。しかし、提供件数は少なく、海外で有償で卵子提供を受ける女性も多いです。

出自を知る権利が保障されておらず、精子卵子提供者の個人情報を保存・管理する制度はありません。事実を知った子どもと親の信頼関係が損なわれたり、子が提供者を探し求め、親子ともに心理的な葛藤を抱えたりすることもあります。親と子への心理的な支援は全くといっていいほどにされていません。
「生殖補助医療法」の問題;

生殖補助医療の規制に関する議論を後回しにして、親子関係を安定させることだけを目的にしており、非常に不十分です。規制や制度の検討がなされないまま、法律で精子卵子提供に国がお墨付きを与えることになります。

精子卵子提供を伴う生殖補助医療を、誰に、どういう条件で認めるのかを議論すべきです。例えば、シングルの女性や男性、同性カップルは医療を受けられるのか。副作用が起きた場合や、卵子提供者が採卵に伴う医療被害を受けた場合の補償はどうするのかも考えないといけません(後略)
また、不妊治療費用の公費助成の問題点;

高額であるが故に、治療を受けたくても受けられない人がいるため、国が助成金を拡充することは賛成です。ただし、慎重に評価しないといけないのは、少子化対策が叫ばれる中、こういった政策が女性に見えないプレッシャーを与えていないか、という点です。少子化対策の目的で進められると、治療を受けても産めない女性、産みたくないという女性にとって苦しい社会になると思います。