訃報に前後して

精神病院の開放化、さらには精神医療の脱施設化の先駆者だった石川信義氏の訃報*1を知った前だったろうか後だったろうか、NHKの『バリバラ』*2の再放送を視た。「どうなってるの?日本の精神医療」*3。今年3月に発覚した、神戸市西区の「神出病院」*4における患者虐待事件を報告する一方で、40歳のときに「統合失調症」のために「神出病院」に強制入院させられ、この病院で18年間過ごしたが、現在では社会復帰し一人暮らしをしている男性を取材し、精神を病む人を病院に隔離すること自体の意味を問う番組。Good timingというかbad timingというか。
じんかれん「精神科病院における入院患者に対する集団虐待・暴行事件に関する緊急声明」*5から、「事件の概要」;


神戸市西区の精神科病院 医療法人財団 兵庫錦秀会 神出(かんで)病院(びょういん)の男性看護師ら6人は抵抗のできない重度の認知症精神疾患患者複数に虐待と暴行を加えたとして監禁と準強制わいせつの疑いで逮捕された。報道で明らかになった動画では、トイレで椅子に裸で座らせ、ホースやバケツで水を浴びせるなど暴行を加えたり、男性患者を病室の床に寝かせ、落下防止柵付きのベッドを逆さまにして覆いかぶせたり、最低限の尊厳を否定する、人としてあり得ない、非人道的な許せない行為を繰り返していた。

医療関係者が患者に暴行する事件は後を絶たない中で、6人もの人間が関与するケースは極めてまれ。医療現場や患者家族らにも動揺が広がっている。神出病院の虐待はいずれも勤務人数が少ない夜間に起きており、県警は、閉鎖的な職場環境が虐待の温床になった可能性もあるとみて動機の解明を進めている。又、経営者幹部らは、長期間虐待、暴行を繰り返していた事実に気づかなかったとしている*6

また、『朝日新聞』の記事;

床やジャムなめさせる動画も 精神科で虐待疑い、再逮捕

笹山大志、五十嵐聖士郎

2020年3月24日 14時00分


 神戸市西区の精神科病院「神出(かんで)病院」で元看護助手らが入院患者を虐待したとされる事件で、兵庫県警は24日、他にも患者らに無理やり性的な行為をさせたなどとして、元看護助手の和田元規容疑者(27)と男性看護師3人を準強制わいせつや暴行容疑で再逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。

 県警は今月4日、入院中の男性患者同士でキスをさせたり、トイレで水をかけたりしたなどとして、和田容疑者と26~41歳の看護師5人を準強制わいせつ容疑や暴力行為等処罰法違反などの疑いで逮捕していた。

 捜査関係者によると、和田容疑者を含む計4人は他にも2018年10月~19年9月、男性患者同士で無理やり性的な行為をさせたり、患者の頭にテープを何重にも巻き付けたりした疑いがある。

 これらの被害者は当時50~70代の患者3人で、いずれも重度の精神疾患があった。和田容疑者のスマートフォンには患者を虐待する様子を映したとみられる動画約30本が保存されており、病室の床や別の患者の体に塗ったジャムのようなものをなめさせる様子も撮影されていたという。6人は無料通信アプリ「LINE」で、こうした動画を共有していたという。
(後略)
https://www.asahi.com/articles/ASN3S3JSKN3RPTIL02G.html

また、NHKの報道;

患者虐待事件 市がたびたび指摘
07月02日 19時09分


神戸市の病院で入院患者を虐待したとして看護師ら6人が逮捕・起訴された事件で、この病院は患者の身体拘束の記録を適切につけていないなど、ずさんな運営を市からたびたび指摘されていたことがわかりました。

この事件は、神戸市西区の精神科病院「神出病院」で勤務していた看護師ら6人が、入院患者にわいせつな行為をしたなどとして、ことし3月、準強制わいせつや監禁などの疑いで逮捕され、その後、起訴されたものです。
神戸市は、年1回、精神科の病床がある市内の14の病院に立ち入り調査を行っていて、NHKは「神出病院」の結果について情報公開請求を行いました。
それによりますと、事件が発覚する前の平成27年度から昨年度までの5年間に、患者の身体拘束や部屋を隔離した記録を適切につけていなかったり、入退院の届けの提出期限を守っていなかったりするなど、毎年、ずさんな運営があったとして指導や指摘を受けていたことがわかりました。
病院側は、指摘を受けるたびに「改善した」と報告していましたが、神戸市は、これまでの立ち入り調査で虐待事件を防げなかったことを重く見て、今年度から14のすべての病院について、調査での患者や職員への聞き取りの時間を倍にするほか、病院職員に市の内部通報窓口を周知するなど、再発防止に取り組むとしています。
神戸市保健課精神保健担当の村田秀夫課長は「去年の調査で残念ながら虐待を発見することができなかった。毎年のように指摘事項が出るのは問題で、指導を強めたい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20200702/2020008717.html