メリットは減っている

(専門学校の)「別の機能(例えば単純労働者の供給源としての)については敢えて書かない」と書いたのだった*1。それに関連して、


出井康博「なぜ、日本は「偽装留学生」大国になったのか? 偽装留学生の闇?」http://blogos.com/article/330746/


在日外国人の中では、ヴェトナム人の数が急上昇している。在日ヴェトナム人の滞在資格(ヴィザの種類)の70%以上は「技能実習」と「留学」である。出井氏によれば、ヴェトナム人留学生の殆どは労働目的の「偽装留学生」であるという。
そうなのねと思うけど、幾つか疑問はある。労働目的の「偽装留学生」それ自体は別に新しい現象(問題)ではない。目立っているのは、そこに参戦するヴェトナム人が急増したということだろう。30年前、バブルとも重なる1980年代後半には、中国大陸からの「偽装留学生」が問題になっていた。*2。事情は詳しくないけれど、それ以前には韓国や台湾からの「偽装留学生」も少なくなかったと推測しても大過はなかろう。また、出井氏も言及しているように、渡航費や日本での生活費や学費以外にも、現地のブローカーのコミッションや役人への賄賂など、「留学」の「偽装」はかなりコストがかかることなのだ。しかし、そうしたコストに見合うメリットは30年前と比べたらお話にならないほど減っている。グローバル化の流れの中で、どの国でも国内の貧富の格差は深刻化しているが、その一方で国同士の貧富の格差は、特に日本を初めとする先進諸国の景気低迷とも相俟って、フラットな方向に変化している。だから、30年前や20年前ならともかく、何故今頃になって? と思った。30年前や20年前と比べて、ヴェトナム国内で稼げるチャンスは格段に増えている筈なのだ。
それから、「日本語学校」に通うだけでは「留学生」というステイタスは獲得できないんじゃないの?と思ったのだが、これは私の知識がアップデートされていなかったが故の勘違い。2011年に、(在留資格としての)以前の「就学」が「留学」に統合されていたのだった*3

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20181009/1539099439

*2:最初は上海人、次いで福建人。一時は、上海の日本領事館前にはヴィザを申請するための長蛇の列ができた。

*3:See eg. ちから法律事務所「留学ビザ」http://chikarah.com/immigrate/visa_study.html つた法務事務所「留学ビザ(College Student) 就労ビザ申請JAPAN」http://working-visa.net/visa/student.html 統合以前については、例えば、古川峰光「就学ビザの法務Q&A 」http://www.lawyersjapan.com/visaqa15.html これは2005年のテクスト。