拡散力の違い

承前*1

『読売新聞』の記事;


「京阪が脱線した」とデマ、否定する発信できず

2018年6月23日 20時1分 読売新聞


 大阪府北部を震源とする地震で運行停止に陥った鉄道各社には当日、情報を求める乗客からホームページ(HP)に接続が集中、一部で閲覧不能になる状態が続き、混乱の一因となった。

 一方、首都圏の鉄道各社は、同じ問題が起きた東日本大震災以降、災害時でも障害が起こりにくいツイッターを併用。平時から運行情報を発信しており、近畿の鉄道会社は、備えに課題を残した。

 「電車が動いているか調べようとしたが、全然つながらなかった」

 18日朝、スマホで阪急のHPに接続しようとした大阪府豊中市の会社員男性(42)は振り返る。情報がなく、最寄り駅に到着後、運行見合わせを知り、途方に暮れたという。

 今回の地震は通勤ラッシュ時間帯を直撃。運行再開まで長時間かかり、JRや私鉄の各駅は乗客らであふれ、バスやタクシーを待つ長蛇の列もできた。

 鉄道各社は、普段から運行の遅れなどがあればHPで公表しているが、当日はネットで検索して接続する人が殺到。サーバーに負荷がかかったとみられる。

 こうした災害時の情報伝達ツールとして、2011年の東日本大震災で注目されたのがツイッターだ。

 世界中で利用されるサービスで、サーバーも日本国内で接続が集中しても対応できるとされる。震災時は、電話が通じない状況でも威力を発揮し、自治体などでも導入が進んだ。

 しかし、阪急、阪神、京阪が開設しているのは、沿線のイベント情報などのPR用のアカウントで、運行情報の発信には使っていない。近鉄、南海、JR西日本はアカウントがなく、主要各社で運行情報の発信に使っているのは、大阪メトロだけだった。

 これに対し、首都圏の主要鉄道会社の多くは、13年までに運行情報専用のアカウントを開設。日頃から人身事故や悪天候などで10分〜30分以上のダイヤの乱れがあれば、振り替え輸送や運行再開などの情報も含めて発信し、乗客にも浸透しつつあるという。

 西武鉄道は震災でHPのサーバーがダウンし、乗客を混乱させた反省から導入。現在約37万人のフォロワー(登録者)がおり、広報担当者は「遅れが出ても、お客様の不要な移動を最小限に抑えることができる。駅などでの混乱も防ぎやすく、スムーズな人員配置ができる」と効果を語る。

 JR西や近鉄は「運行情報を知らせるスマホ用の専用アプリもある」としているが、ダウンロードしないと見ることはできない。一方、ツイッターは、情報を見た人がリツイート(転載)することで情報が拡散する特徴があり、家族らを通じてネットを利用しない人にも伝わりやすいとされる。

 阪急、阪神、京阪のPR用のアカウントでは「運行情報は発信していません」などと記載されているが、今回の地震では、担当者の判断で急きょ何度か運行情報をつぶやいた。

 しかし、地震当日、「京阪が脱線した」とのデマがネット上で広がったのに、京阪は否定する発信もできなかった。同社は「そこまで手が回らなかった。今後の検討課題にしたい」とし、阪急は「想定外の事態だった。SNS活用を含めた発信強化のきっかけにしたい」としている。

 内田理・東海大教授(災害情報学)の話「災害の備えは、使えなくなることを想定し、複数の手段を用意しておくのが重要。HPだけでは自分から接続してくる人にしか情報を届けることができず、拡散機能があるツイッターなどのSNSを併用するのが望ましい。不正確な情報を否定するのも重要な役目だ」
http://news.livedoor.com/article/detail/14909561/