「初学者」とは誰?

寺沢拓敬*1「地雷本を回避するには?(文献の探し方 Tips)」https://news.yahoo.co.jp/byline/terasawatakunori/20180611-00086352/



卒論を書くゼミ生に先行研究を探させていて、その関係で文献指導をする機会がありました。学生は、初めはなかなか「斬新」な本――要するに、入門書としてはお薦めしないクセの強い文献――を選んできます。これは初学者なので無理もないことですが、私が驚いたのは、自分自身が「なぜそれが斬新な選書なのか」を説明するのにけっこう頭をひねったことです。
「初学者」というのがどういう人を指すのかがわからなかったので、このテクスト全体の意味が掴み難かった。「初学者」=「卒論を書くゼミ生」ということでいいのだろうか。でも、私の語彙においては「卒論を書く」学生は「初学者」ではない。というか、「初学者」に「卒論」は書けないだろう。また、高校を卒業したばかりの1年生(関西風に言うと1回生)は何といったらいいのか。「初学者」以前? まあ、凄い大学者から見れば、どんな人でも「初学者」になってしまうのだろうけど。

大学の図書館に置いてある本には、博士論文を出版化したものがある。中にはほとんどそのままのものも。初学者にはなかなかハードルが高いので注意したほうが良い。博論本かどうかは、「はじめに」「謝辞」「あとがき」辺りに書いてあるのですぐわかる。
「初学者」=大学1年生ということであれば、「ハードルが高い」というのは当たり前だろう。でも、「卒論を書く」学生にとってはどうか。「博論本」を避けて「卒論」が書けるのかどうか。また、「参考文献案内としての有用性」或いは研究動向を知るための有用性においても、新しいか古いかという問題はあるものの、「博論本」は価値があると見込めるのでは? 博士論文では、そのテーマに関する先行研究の詳細なレヴューを含むことが期待されているわけだから。さらに、「博論本」は薦めないよといいながら、大学の「紀要」論文を薦めている。「博論本」を「ハードルが高い」と感じてしまう人にとっては、「紀要」論文の「ハードル」も高い筈だ。また、「博士論文」にせよ「紀要」論文にせよ、「初学者」に配慮して書くということはないでしょ。