井上英介「消える「奇跡の原っぱ」」『毎日新聞』2013年7月3日
「草深原」は「そうふけっぱら」と訓む。千葉県印西市の「千葉ニュータウン」*1開発予定地内にある約50ヘクタールの原っぱ。「ホンドキツネをはじめ環境省や同県[千葉県]指定の絶滅危惧種136種を含む多数の希少な生き物が暮らす」。
「都市再生機構」(UR)による「定期的な草刈り」によって森林化が阻止されている。
一帯はもともと、里山の間に低湿地が入り込む起伏に富んだ地形だった。1969年に始まったニュータウンの初期造成で山を削り、その土を使って湿地を埋め、平らな土地にした。その後本格的な宅地造成が進まず、半世紀近く放置され、草原化していた。
にも拘わらず、URは2012年11月に「草深原」の「宅地造成」を開始した。何故?
千葉ニュータウン開発事業は10年間で終わり、東京の多摩ニュータウンと肩を並べる34万人の都市となるはずだったが、その後のオイルショックやバブル崩壊で計画は遅れ、何度も縮小された。今の目標は14万人だが、現在人口は9万人。都心とまちを結ぶ第三セクターの北総鉄道は利用客数の目算を誤り、超高額運賃が住民を苦しめる。
実は、開発事業の終了期限が来年3月末に迫り、未開発のまま土地を抱えておくことができない、という事情がある。しかも、工事を始める直前、会計検査院から未利用地を速やかに処分するよう指摘を受けている。URの前身は日本住宅公団や宅地開発公団などの政府の特殊法人で、土地には公金が入っている。職務に忠実な検査員の監視の下、URは既定の計画に縛られ身動きが取れないのだ。
*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100318/1268931002