単純想起?

最近総選挙絡みの輿論調査を採り上げたのだが*1、『週刊ポスト』が(公示前の調査に関してだが)新聞の輿論調査にいちゃもんをつけていたのだった*2


大手新聞 世論調査は質問の仕方で結果を操作できると認める

2012.12.03 16:00


本誌はかねてから、新聞の世論調査は〈世論操作〉であると指摘してきたが、「世論調査のカラクリ」を大新聞自ら告白するという珍しい記事が出た。

 その前日(11月26日)、読売と朝日が総選挙投票先の世論調査を掲載したが、朝日が「【1】自民23%、【2】民主13%、【3】維新9%」であったのに対し、読売は「【1】自民25%、【2】維新14%、【3】民主10%」という結果になった。

 すると読売は27日付朝刊で、「世論調査結果 質問方法で差」というタイトルで、朝日との結果の違いが起きた理由について、「読売は質問時に14政党の名前を読み上げて選んでもらっているが、朝日は政党名を読み上げない」と説明した上でこう書いた。

〈このため、新たに結成された政党の名前は思いつきにくく、(中略、朝日調査は維新の)数値がやや低めになるようだ。世論調査の結果は、選択肢の読み上げの有無だけでなく、質問文の違いや全体の質問の構成・並び順などにも影響を受ける〉

 わかりにくい言い訳だが、要は「世論調査は質問の仕方で結果を操作できるから、アテになりません」と認めているのである。その結論を〈世論の変化 をつかむには、同じ報道機関の調査で推移を見ていくことが有効だ〉というに至っては笑うほかない。過去、“自前の世論調査”の結果を振りかざして政権や特 定の政治家を追及してきた反省を述べるべきだろう。

週刊ポスト2012年12月14日号
http://www.news-postseven.com/archives/20121203_158125.html

先ずここで比べられている読売調査と朝日調査の差異は誤差の範囲なのではないか*3。また「世論調査の結果は、選択肢の読み上げの有無だけでなく、質問文の違いや全体の質問の構成・並び順などにも影響を受ける」って、何を今更驚いているのだよ。そんなの当たり前ではないか。そのくらいのことはどの社会調査の教科書にも書いてあるぞ。
そんなことよりも興味深いのは(記事によれば)単純想起の質問をしたということだ。単純想起はブランド力の調査によく用いられるが、ブランドの力というのは選択肢から選ばれることにもまして、例えば


CPUといえばインテル
痴漢といえばウエクサ


といった、いきなりの印象に現れるといえるだろう。だから朝日の調査の方が政党の〈ブランド力〉を適切に表現し得ているといえないこともない。まあどちらの数字も大した違いはないのだが。ところで選択肢を「読み上げない」のなら、フリー・アンサーなので、例えば


ハシシタんところ
イシハラのあれだよ
オザワが作った奴あるじゃん


といったイレギュラーな回答が多く出ることが当然予想されるが、これらをどうコーディングするのかというのが結果にとって重要であることはいうまでもない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20121210/1355105222

*2:Via http://d.hatena.ne.jp/hajimetenoblog/20121206/1354788821

*3:統計的検定への言及がないので何ともいえないけど。