分母問題

某人に教えていただく。
東京新聞』の記事;


<はたらく>実態反映しない高就職率 留年希望者など計算から除外


2012年6月1日


 文部科学省厚生労働省が五月中旬に発表した二〇一二年三月の大学卒業者の「就職状況調査」によると、就職率(四月一日現在)は93・6%で四年ぶりに改善した。単純に数字を見ると、大学生の就職難が叫ばれている中、九割を超える大学生が職に就けているように見える。が、大学担当者からは「実態を反映していない」との声が上がる。就職率の“からくり”を調べた。 (稲田雅文、田辺利奈)

 岐阜県出身で関西地方の国立大学に進学した男子学生(23)は、出遅れが響いて昨年の就職活動に失敗し、卒業に必要な単位を取らない形で留年した。

 就職セミナーに通い、金融や商社に興味を持った一方、公務員試験の模擬試験も受けた。八社受験したが、企業が厳選採用を進める中、希望の業種には受からなかった。

 就活二年目は業種も絞らず、中小企業にも目を向け三十〜四十社にエントリーした。二度目の就活に入る前に留学したことも生き、面接官の反応は良かった。複数の企業から内定をもらい、先日、入社する企業を決めた。「留年すれば何とかなるほど状況は甘くなく、他の人には絶対に勧めません」と振り返る。

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 「九割を超える就職率の数字は高すぎ、実態を反映していない」

 特定の世代が景気の変動で就職できず、不利益を受けている現状を問題提起する市民団体「氷河期世代ユニオン」代表の小島鉄也さん(38)は批判する。

 文科省厚労省は毎年、十月一日時点から二カ月おきに「就職内定状況調査」を実施。就職内定率を公表しており、四月一日時点の数字が就職率となる。一一年十月一日時点の内定率は59・9%。十二月一日時点の71・9%、一二年二月の80・5%と数字は上がっていく。

 就職率が高くなるのは、大学を卒業した人全体のうち就職できた人の割合ではなく、母数を流動的な「就職希望者」の数で計算しているからだ。就活や公務員試験、資格試験などがうまくいかない学生は、月が進むにつれて就職希望者にカウントされなくなり、当初に比べて母数が減る。

 卒業時点で進路が決まらなかった「進路保留者数」を公表している青山学院大(東京都)は、卒業に必要な単位を取った場合でも留年できる「卒業延期制度」がある。一二年度に利用している人は、一一年度の卒業者四千百二十人(夜間部含む)に対し、百九十九人いるという。別の都内の難関私大も本年度、百十二人が希望留年制度を利用している。これらの学生も母数から除外される。

 就職内定状況調査に沿った計算方法だと、一一年度卒業者で95・0%の高い就職率となった中部大(愛知県)キャリアセンターの担当者は「卒業者数から大学院進学者のみを引いた人数に対する就職率を出すべきではないか」と語る。この方式で計算し直すと、同大の就職率は80・4%。「これでも、就職に有利な理工系の学部を持つのでまだ高い方」という。

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 実は、全大卒者に対する就職率の統計が公表されている。文科省が毎年八月ごろ公表する学校基本調査で、一〇年度卒業者の就職率は61・6%。卒業者数から進学者数を引いた人数に対する就職率を計算すると70・6%となる。

 調査方法への批判の声もある。調査対象は全国の大学や専修学校など計百十二校で、毎年変わらない。対象人数も六千二百五十人に限られる。

 中部地方の大学の担当者は「国公立大学や難関私大など、もともと就職しやすい大学が調査対象。(実態にそぐわず)今年もこんなに高い就職率が出てしまった、というのが率直な感想」と語る。

 複数の大学の就職担当者は、まだまだ雇用情勢は厳しいとの認識を示し、「親は、わが子が昔とはまったく違う環境で就活をしていることを知り、高望みせず温かく見守ってほしい」と口をそろえる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012060102000116.html

「就職状況調査」と「学校基本調査」のギャップ。前者の場合、分母が小さくされているので必然的に「就職率」は高くなるという話。また調査対象の問題。「就職状況調査」で調査対象校をランダム・サンプリングによって選んだら、数字はどれくらい変動するのか。「実態」を重視するならば、卒業後にやっと就職が決まるということもあるわけだし、就職が決まっても(例えば)あまりにブラックなので直ぐに退職せざるを得ないということもあり、卒業半年後或いは1年後の就業率も示すべきなのでは?*1
こういう問題は失業率の計算についても言われていなかったか。