徐冰『地書』

先週、滬申画廊*1で徐冰*2の新作『地書(Book From the Ground)』*3を観た。
『地書』とは『天書』(1987-1991)に対するもの。徐冰は常に〈文字〉とりわけ漢字に拘ってきたといえる。『天書』は徐冰自らが捏造した〈漢字(のようなもの)〉を使った(徐冰自身を含めて)誰も理解できない書物。『新英文書法』(1994-1996)では英単語を〈漢字(のようなもの)〉にしてしまった。2003年から準備された『地書』では新たな象形文字の構築が目指される。(インターネット上を含む)世界中から収集されたロゴやアイコンが整理され、語彙や文法が構築される。『地書』はそうしたアイコンで書かれた、或る都市ホワイトカラーの一日を綴った102頁の小説であり、『天書』とは逆に、現代社会にコミットしている人なら、国籍や教育程度に関わりなく誰でも読めて然るべき書物だということになる。なお『地書』は「中国第一部没有一個漢字的正規出版物」*4として廣西師範大学出版社から実際に公刊されている。この展覧会ではアイコン収集ノート、『地書』の木版画ヴァージョン、『地書』を積み重ねた〈バベルの塔〉、(インスタレーションとしての) 徐冰のオフィスの再現、『地書』グッズのコンセプト・ショップが展示され、アイコンを使って上海の風景を描いたアニメーション作品が上映されている。またアイコンから英語への翻訳ソフトを備えたPC端末。
徐冰の文字や言語への拘りについて、Sam Gaskin “The babelfisherman”(TimeOut Shangahi May 2012)からメモしておく;


'My generation has a really awkward relationship with language,' he says.
Xu, 57, remembers learning traditional characters at primary school one semester, simplified characters the next, and then reverting back to traditional characters when initial attempts to simplify the language were deemed unsuccessful. Language, he discovered, was not something so sacred that it couldn't be challenged.
The artist interest in language was further complicated during the Cultural Revolution, when it became both aggressor and victim as denouncements were made and books were banned. Xu was himself sent to the countryside for two years before the cultural Revolution ended and universities reopened. (…) (p.52)
See also


李静、柯焱「専訪徐冰:伝統語言很不適応今天的溝通方式」『外灘画報』2012年5月10日、pp.106-111


なお滬申画廊では仏蘭西人写真家Jean-Christian Bourcart*5の写真展Traffic*6も開催されている。