「予言」的?


斎藤美奈子*1「日本経済沈没の予言の書〜小松左京日本沈没』(一九七三年)の巻」『scripta』18、pp.2-4


曰く、


一九七三年は第一次オイルショックの年である。第四次中東戦争の影響で原油価格が高騰、石油の供給制限によってモノ不足が起こるとの噂が立ち、トイレットペーパーの買いだめに走る人々の列ができた。歴史年表式にいえば、いわゆる高度経済成長は、ここでストップしたのである。
とはいえ、第四時中東戦争が勃発したのは、一〇月六日。当時の田中角栄内閣が「石油緊急対策要綱」を閣議決定したのが一一月一六日。省エネ策の一環としてテレビの深夜放送が停止されたり、街のネオンが消えたり、トイレットペーパー騒動が起こったりしたのはその後の出来事だ。
同年一一月に出版された五島勉ノストラダムスの大予言』(祥伝社ノン・ブック)が二五〇万部にも達するベストセラーになったのも、偶然ではなかったかもしれない。副題は「迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日」。当時の小学生や中学生には相当なインパクトを与えた。七〇年代の中〜後半というのは、案外と末法思想な時代だったのだ。
が、今回のお題はノストラダムスではなく、同じ七三年にカッパ・ノベルス(光文社)の一冊として出版された小松左京日本沈没』である。小学館文庫版の開設を担当したSF作家の堀晃氏によれば〈年末までに、上下巻合計四百万部という空前の記録を作っている〉。出版されたのは三月、オイルショックノストラダムスより半年以上前だった。「末法思想」を先取りした小説であり、半年後に日本経済が沈没することを思えば、予言の書だったといえるかもしれない。(p.2)
日本沈没』が「予言の書」だというのだが、2012年に読むと、何やらこの斎藤美奈子のこのテクストが「予言の書」めいてくる。この雑誌の発行日は2011年1月1日。つまり小松左京が亡くなる約8か月前である*2。また斎藤さんは

日本沈没』から四〇年弱。その後の日本列島は、実際にも、小説に描かれているような人的被害をともなう天災をいくつも体験した。大島の三原山の噴火(一九八六年)。雲仙普賢岳の噴火による火砕流(一九九〇年)。阪神淡路大震災(一九九五年)。三宅島の噴火(二〇〇〇年)。(p.4)
とも書いている。311の約2か月前。

映画版『日本沈没*3は1974年のお正月映画。もう1本のかなりお気楽な映画と同時上映だったと思う。
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