承前*1
松崎しげるの「愛のメモリー」はグリコの「イメージ・ソング」(「イメ・ソン」)だった(川本三郎「スポンサー 企業とタイアップしたカルチャーの行方」in 『'80年代都市のキーワード』、p.38)。
ところで、この『'80年代都市のキーワード』(1986)の「まえがき」に曰く、
ファミコンの任天堂と新日鉄の経常利益がほぼ同じだ――という事実を最近知った。これは昭和一九年に生まれ、昭和四三年に大学を卒業した旧人類にとっては信じがたい驚くべき事実である。
私の世代では大学を卒業し新日鉄に入社する学生はエリートだった*2。任天堂に入社しようとする学生は当時は私の周囲にはいなかった。――それから二十年。いまや鉄というかつての基幹産業が斜陽化し、ファミコンという、ありていにいって子どもの遊びのほうが時代の主役になっている。ポストモダンといわれる時代はそういう時代なのかとひとり驚きつつ納得する。(p.2)
八〇年代になって急速に円は強くなった。いまや一ドル一五〇円の時代である。長いあいだ一ドル三六〇円の時代を生きてきた人間にとってはこの急速な変化はとまどうばかりである。そのとまどいが時代を「驚き」で見る視点を生む。
本書は、いわば一ドル三六〇円の時代に青春時代をおくってきた人間が、いま、一ドル一五〇円の時代をむかえてどまどい、かつ、驚いている目で見た現代社会論である。(p.3)
- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 1986/12
- メディア: 単行本
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