橋下だけの問題ではないが

橋下徹ネタ*1
『朝日』の記事;


反「ハシズム」集会に香山リカ氏ら 平松市長も出席


11月の大阪市長選に出馬する方向の橋下徹大阪府知事の政治手法を議論するシンポジウム「『橋下』主義(ハシズム)を斬る」が17日、大阪市で開かれた。山口二郎・北大院教授らが主催し、自治体改革や教育行政に「政治主導」を打ち出す橋下氏の姿勢をファシズム(独裁主義)にかけて批判的に検証するのが狙い。同市長選で再選をめざす平松邦夫市長も会場に姿を見せ、識者らの議論に耳を傾けた。

 山口氏は基調講演で、橋下氏の政治手法について「上意下達の軍隊的官僚組織を作り、教育に競争を持ち込むやり方は多様性や自発性を否定している。政治主導ではなく単なる支配だ」と批判。「東日本大震災後に我々が必要としているのは相互扶助。政治は悪者を探してたたく見せ物ではない」と主張した。

 パネル討論では、精神科医香山リカさんが、橋下氏の支持率の高さについて「次々にネタを出す刺激が受けているのでは」としつつ、「バトルの構図を描いて二者択一を迫るのが得意だが、世の中には白黒はっきりつかないことが多い」と指摘。帝塚山学院大の薬師院仁志教授は「橋下氏は軍隊的官僚主義と自由競争を求める市場原理主義という、両立しないものを時と場所に応じてしゃべる。長い目で見て(住民を)どこに連れて行くのか」などと疑問を示した。
http://www.asahi.com/politics/update/0917/OSK201109170144.html

ハシズム」なる言葉がメジャーなメディアに登場したということが話題になっているようだ。しかし、「ハシズム」っていうのはあまりいい言葉ではないだろう。美学的な問題はさて措いて、〈橋下徹的なもの〉というのは別に大阪特有のものでもないし、橋下徹の個性に由来するものでもないと思うからだ。地域社会における階級的バランスの変化*2、〈保守−革新〉構造の無効化*3等々に伴って、地方首長にポピュリズム的なミニ独裁者が擡頭するということでは、何よりも先ず石原慎太郎の名前を挙げなければならないだろうし、メジャーな奴らだけでも、横浜の中田某、名古屋の河村たかし、それから鹿児島県阿久根市の某といったのが思い浮かぶだろう。或る種の左翼的全体主義スターリン主義と呼ばれることに匹敵する代表性が橋下徹にあるのだろうか。ところで、〈ハシスト〉というか橋下徹支持者が如何なる奴らなのかというのは知らないのだ。橋下徹支持者に関する実証的研究というのはあるのだろうか。石原慎太郎については地理学的考察が話題になるということがあったけれど*4
さて、「橋下氏は軍隊的官僚主義と自由競争を求める市場原理主義という、両立しないものを時と場所に応じてしゃべる」(薬師院仁志)。橋下徹支持者に限らず少なからぬ人にとって、この2つは「両立しない」とは思われていないのかもしれない。現代は(概念としての)〈政治〉が経済や経営という概念に侵蝕され、還元されようとしている時代であるともいえる*5。ぶっちゃけた話、「軍隊的官僚主義と自由競争を求める市場原理主義」というのは、政治家の理想形はワンマン経営者、それもブラック企業のワンマン経営者だという前提を置けば矛盾しなくなるのかも知れない。「政治主導」の名の下に〈政治〉がdisplaceされてしまうという逆説! こちらの方が事態が深刻だといえるかも知れない。それとともに、ルサンティマンなしでは生きていけなくなるという意味での全員弱者化。