- 作者: 中野美代子
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中野美代子先生曰く、
また、「物語というのがほとんどなく、遊郭の密室性ないし擬似的仙界性を映像だけで見せる」とも(ibid.)。
一九九八年に台湾の侯孝賢監督が製作・監督した映画『フラワーズ・オブ・シャンハイ(海上花)』*1は、中国映画ぎらいの私を魅了した。全篇これ、もの憂げな青楼(妓館)すなわち遊郭の室内。豪華な調度品が暗い光のなかに沈み、やはり豪華な衣裳の男女が宴席でさんざめく。ランプの光がフェイド・インとフェイド・アウトのシグナルとなり、その前後で女となじみ客の閨房での語らいがあったことを暗示はするが、閨房シーンはない。しかし、青楼の濃密な空気が凝縮された空間は、一歩外に出るとひろがる実社会から隔絶された擬似的仙界である。(「文字か絵画か――肉麻性のゆくえ」『中国春画論序説』、p.268)
さて、先日妻と侯孝賢の話をしていたら、侯孝賢が『海上花(Flowers of Shanghai)』を撮るなんて全然ガラじゃないと妻が言った。それに対して、侯孝賢以外の中華圏の映画作家で、ほかに『海上花』を撮れる人はいないじゃないか、張藝謀や陳凱歌にはそもそも不可能なわけだし、と俺は言った。妻は、香港人ならもっとよく撮れるという。その後、王家衛だったらどうかな、内地の作家でも田壮壮ならば撮れるのでは? とも思った。これについては、秋菊小姐のご意見なども伺いたいところではある。
ところで、『海上花』の〈暗さ〉は『最好的時光』第2部*2と同質の〈暗さ〉だ。
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*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110331/1301601934 また、賈樟柯の『海上伝奇』に侯孝賢が登場して、『海上花』について語っている。See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100702/1278039643 ところで、この映画は資本の構成からいえば、日本映画ということになるのでは?
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091116/1258348724