http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100613/1276414494に関連するか。
先月末の『朝日』の記事;
そもそも「能力主義」と「年功序列」というのが対立するものなのかどうかわからない。また、たしか熊沢誠氏(『能力主義と企業社会』)が指摘していたように、ホワイトカラー労働の場合、組織(部門)のパフォーマンスを個人の能力に還元できるかという問題がある。さて、「年功序列」を巡って、岩井克人氏は
強まる年功序列志向 新社会人、勤務先に満足7割強2010年5月30日9時17分
今年4月に働き始めた新社会人の3割近くは第4希望以下に就職したが、全体の7割強が勤務先に満足し、能力主義より年功序列の賃金体系を望む人が多い――。インターネット調査会社マクロミルの調査でこんな結果が出た。
今月7〜9日、1987〜88年生まれの新社会人(公務員も含む)を対象に、男女258人ずつ計516人から有効回答を得た。調査は2008年から毎年実施している。
現在の勤務先の志望順位は「第1希望」が42%で09年より7ポイント減り、「第4希望以下」は29%と9ポイント増えた。勤務先に「満足」「どちらかと言えば満足」は計74%で、過去2年より満足度は高い。
どの賃金体系を望むかは「年功序列型」が41%、「能力主義型」が35%。「年功序列型」は08年が32%、09年が37%と増加傾向にある。
マクロミルの担当者は「厳しい就職活動の経験から、不安な気持ちが根底にあることが見て取れ、結果として安定志向も強まっている」と分析している。(江口悟)
http://www.asahi.com/business/update/0529/TKY201005290350.html
と述べている。「年功序列」を希望するというのは会社に対するより長期的なコミットメントを表明しているということになる。ここからは色々な社会学的帰結が予想されるだろうけど、ここではいちいち述べない。まあ、入社して数か月ということはまだ「能力主義」にしても「年功序列」もあまり切実な意味を有していないということでもある。何しろ「能力」もまだ未開発で、「年功」も積んでいないわけだから。寧ろ「年功序列」についての損得の感覚が切実なのは或る程度熟練もし、同時に将来の出世についても見えてくる30代の人なのでは?
年功賃金制度とは、勤続年数によって賃金が上がっていく制度ですが、たんに従業員の賃金がそれぞれの生産性(正確には限界生産性)の上昇に比例して上がっていくというのではありません。ここで言う年功賃金制とは、従業員が若いときにはその賃金は生産性以下に抑えられ、従業員の年齢が高くなるとその賃金は生産性以上になるという賃金システムです。当然、賃金の伸び率は生産性の伸び率を上回ることになるのです。
これがどういう意味をもっているのかというと、若いうちは、会社に与えるもののほうが会社から受け取るものより大きいので、その分、会社に一種の預金をしていることになります。それは、若いうちに辞めてしまうと会社に取られてしまうので、一種の身代金、英語でいうとHOSTAGEの役割をすることになるのです。会社に身柄を預けて、長年働き続けるうちに、この身代金がだんだん戻ってくる。定年まで勤めあげると、そのすべてを取り戻すことができるという仕掛けになっているわけです。同じ会社で長く働けば働くほど有利ですから、従業員には、会社に長く居続けるインセンティブが生まれます。(『会社はこれからどうなるのか』、pp.189-190)
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