中年ロック

『読売』の「発言小町」の


43歳の中年女性です。
今のロックシーンで、40歳以上でも聴けるロックがあったら、
ぜひ教えていただきたいと思って、トピをたてました。

昔は、10代から洋楽もJ−pop(当時はそんな風にいいませんでしたね)音楽は大好きでしたが、
90年代にはいり、子育てあれこれですっかり今はやりの音楽にうとくなり、
今ではかなりわかりません(泣)。
以前はヘビーメタル以外のロックなら、なんでも聞いていて
ストライクゾーンはそれほど狭くないと思います。

カーラジオのFM局から聞こえる曲に、あ、これいいなー、と思ったりして
マイケミカルロマンス、ミカ(クイーンを思い出させます)等聴いたりしますが、
他におすすめがあったら、是非教えてください。

(昔はクイーン、ホール&オーツ、マンハッタントランスファー、ヒューイ&ザニュース、それから!
RCサクセションの大ファンでした)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/1024/271168.htm

という質問を巡って。
「昔はクイーン、ホール&オーツ、マンハッタントランスファー、ヒューイ&ザニュース、それから!/RCサクセションの大ファンでした」というのは、たしかに「ストライクゾーンはそれほど狭くない」。
これを巡る『読売』の記事;

発言小町@新聞]中年ロック 何を聴けば?
動画サイト活用 再生多いバンドを


 「40歳代の私にお薦めロックを教えてください」。インターネットの掲示板「発言小町」の投稿に、同じ世代を中心としたロック愛好者からの助言が次々と寄せられた。“中年ロックブーム”は本物らしい。

 投稿した女性は43歳。10歳代のころ洋楽に親しんだが、「子育てなどで、すっかり今はやりの音楽に疎くなり」、何を聴いたらいいか掲示板で助言を求めたのだ。すると「私の最近の好みはミューズなど」「グリーン・デイ」「オアシス」「ミーカ」「コールドプレイ」と英米の人気アーティストの名前が次々挙がった。

 投稿者と同じように子育てで音楽から離れていたという40歳代の女性たちは、自分好みの洋楽を探す方法も助言。「動画サイトで再生回数の多いミュージシャンを聴いてみては」「アメリカやイギリスのオーディション番組を参考にして、いい曲だと思うと動画サイトを見る」。なるほど、動画サイトはロックを楽しむのにも欠かせないようだ。

 子どもと一緒に楽しんでいる人も。「友達が付き合ってくれないので、息子とコンサート行ってます」「最近の日本映画やドラマの主題歌に70〜80年代の洋楽が使われていて、クイーンやT・レックスを知っていると言うと、子どもたちと当時の洋楽の話ができてうれしい」など。一念発起して「ギターを練習中」という人もいた。

 月刊誌「ロッキング・オン」編集長の粉川(こかわ)しのさんは「今の40歳代は、日本の洋楽市場が最も盛り上がった80年代に洋楽に親しんだ世代」と指摘する。テレビの洋楽情報番組「ベストヒットUSA」を見て、マドンナやマイケル・ジャクソンホール&オーツデュラン・デュランなどに熱狂した女性が多いようだ。掲示板にもロッド・スチュワートやシカゴなど当時流行したアーティストの名前が躍る。

 「この世代の女性は、少女漫画から飛び出してきたような格好いいロック歌手にあこがれ、ある意味ミーハーだった。カワイイ、カッコイイということに目端が利くともいえる。だから音楽ジャンルの間口が広く、偏見なく色々と聴いていて柔軟な感じがしますね」と粉川さん。



 確かに、“中年ロック”は今や一大潮流のようだ。かつての名盤を高音質で録音したCDを、紙ジャケットに入れて再発売するケースが相次いでいる。若い世代は音楽をダウンロードして聴くのでCDをあまり買わず、中年世代がCD市場を下支えする。中年バンドのコンテストやライブも盛ん。中年主婦バンドの奮闘を描いた舞台劇まで登場。劇中で役者たちがディープ・パープルの名曲を演奏すると、劇場はコンサートさながらの総立ちになる。

 「ロックは若者の音楽というのは幻想です」と言うのは音楽評論家の萩原健太さん。「ロック好きの中年は若ぶっているわけではない。ロックを作り上げてきた世代が、今も元気にロックしているだけなのです」
(2009年11月15日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20091115-OYT8T00265.htm

実は俺も新しめのバンドとかはあまりよくわからないけど。確実なのは、店に行って、ジャケット・デザインで選ぶということ。
さて、記事の中で、「今の40歳代」は「テレビの洋楽情報番組「ベストヒットUSA」を見て、マドンナやマイケル・ジャクソンホール&オーツデュラン・デュランなどに熱狂した女性が多いようだ」と言われている。それだけじゃなくて、40代というか私の世代というのはもしかして、日本の音楽受容史において最も豊かな聴取経験を持った世代なのかもしれない。何しろ、様々なジャンルというか動きの端緒に立ち会った世代なのだ。1970年代中頃のパンクもそうだし、テクノにしてもクラフトワークYMOの世代。ヒップホップにしても、Run-D.M.C.*1がデビューした時に聴いた世代だということは強調しなければならない。また、ワールド・ミュージックということで、アンテナを英語圏以外の地域に拡げたのも私たちの世代だろう。因みに、マイナーかメジャーかという濃淡はあるのだろうけど、私たちの世代では、まだファンやミュージシャンの島宇宙化が今ほど進んではいなかった。〈ロック・ファン〉という曖昧な表現が通用した世代なのだ。別の側面からいえば、パンクもヘヴィ・メタルもテクノも、果てはヒップホップやレゲエも〈ロック〉という大カテゴリーの中の下位ジャンルという感じではあった。ということで、40代というか同世代の人に言いたいのは、若者に見向きしなくてもいいから、自らの世代的経験とセンスを信じて、 同世代のミュージシャンを、過剰なノスタルジーを抱かずに、追いかけるということでいいんじゃないかということだ。かつてのパンク小僧が如何にして中年になっているのかを見極めるために、例えばPaul Weller22 Dreams*2を聴いてみるとか。
22 Dreams

22 Dreams

ところで、萩原健太氏の「ロックは若者の音楽というのは幻想です」という発言だけど、ロックは良くも悪くも既に〈伝統〉であるということは認識されなければならない。何しろ、エルヴィス・プレスリーが"That's all right mama"をリリースしたのが1954年7月なので(森正人『大衆音楽史』、p.108)、日本の55年体制よりも古いわけだ。問題は〈伝統〉を適切な仕方で引き受けるということなのだろう。